SaaS業界がリモートワークで営業組織力を上げるための方法

新型コロナウイルスの影響によりリモートワークが推奨され、SaaS業界においては多くの企業がリモートワークへ移行しました。しかし、一方でリモートワークによるコミュニケーション不足が問題になってきています。特に営業部門においては、社内での意思疎通、案件や営業活動の共有・可視化、他部署との連携などが大きな課題になっています。このような問題を放置すると営業組織力の低下につながります。さらに売上にも影響が出るため、リモート環境下で営業組織力を上げるための対策を講じましょう。

(参考: 「営業活動のリモートワーク調査」概要)

SaaS業界のリモートワークの実態

最初に、SaaS業界のリモートワーク実施率や課題について簡単に解説します。

リモートワーク実施率は約61%

株式会社カオナビが独自調査した「リモートワーク実態フォロー調査レポート」によると、SaaS企業が属するIT・インターネット業界のリモートワーク実施率は61.0%となりました。全業界のリモートワーク実施率は23.2%のため、リモートワークへの切り替えに比較的上手くいっていることが伺えます。

(参考資料:Javaキャリ「IT業界のテレワーク実施率は?変われる企業に将来を見出す」)

リモートワークを実施する場合の注意点

IT・インターネット会社の約6割がリモートワークを実施しています。その一方で、4割の企業がリモートワークを実施していません。株式会社レバテックの独自調査「リモートワーク事情調査」によると、リモートワークを導入しない理由として以下のようなものが挙げられています。

  • 機密情報漏洩のセキュリティリスクがあるから
  • 社員の生産性が低下するから
  • 社外顧客対応などに支障が出るから
  • 社員同士のコミュニケーションに支障をきたすから
  • 社員の帰属意識が低下するから
  • 社員の評価が難しいから

上記の問題を解決しなければ、従業員の所属意識やモチベーションの低下、営業組織力も低下してしまうため注意しなければいけません。

参考資料:レバレジーズ株式会社「コロナ禍での働き方、社会人エンジニアの4割が「フルリモート」」

SaaS業界は「営業組織力」の強化で売上を伸ばす

新型コロナウイルスの影響でリモートワークの推奨がされましたが、そのような組織体制に切り替えても、営業組織力を上げていく必要があります。とくに、サブスクリプション型ビジネスモデルを提供するSaaS業界では、営業プロセスの分業化により、業務効率化がなされているケースが多いです。

[各部門の役割]

  • マーケティング部門…新規見込み顧客(リード)を獲得する
  • インサイドセールス部門…見込み顧客と良好な関係を構築する
  • 営業部門…商品・サービスの提案やクロージングをして契約を獲得する
  • カスタマーサクセス部門…サービス導入後の支援で継続率を上げていく

営業プロセスの分業化により生産性を上げることは可能ですが、各部門における情報共有と信頼関係の構築は欠かせません。リモート環境下で行うことは想像以上に大変です。

(参考資料:HubSpots「インサイドセールスとは?なぜ注目されるのか、独自調査データを踏まえて解説」 )

 

[SaaS業界]リモートワークで営業組織力を上げるコツ

リモートワーク環境下でも営業組織力を上げて、営業プロセスの分業化で生産性を上げていく必要があります。実際に、どのような方法で営業組織力を上げられるのでしょうか?ここでは、リモートワークで営業組織力を上げるコツをご紹介します。

仮想オフィスや仮想会議室を使用する

バーチャルオフィスや仮想会議室を使用すれば、リモートワーク環境下でもコミュニケーションを活性化させられます。

バーチャルオフィスとは、図面上にメンバーのアイコンが表示されており、話したい相手に近寄ると話し声が聞こえたり、話しかけられたりするようなオンライン上のオフィスです。

リモート環境下でも、相手の状況が分かり話かけやすくなることから、バーチャルオフィスを導入する企業が増えています。

参考資料:ITmediaNEWS「2022年の総務、社内コミュニケーションのキーワードは「三位一体」と「新技術」なワケ」

社内メディアを定期的に配信する

コミュニケーション不足による営業組織力の低下を防止するために、社内報を定期的に配信する企業が増えています。社内報では、各部門での取り組みや人物紹介をしたり、社内イベントの告知をしたりしています。

どのようなメンバーと働いているかを認識することで、従業員同士の交流効果が見込めるとして社内報を配信する企業が増えました。

参考資料:ITmediaNEWS「2022年の総務、社内コミュニケーションのキーワードは「三位一体」と「新技術」なワケ」

チームビルディングを実施する

リモートワークを実施すると、従業員の所属意識が薄れていきます。そのため、各部門の従業員を集めてチームビルディング(相互理解を目的としたイベント)を実施する機会を設けましょう。

オンライン上で新年会や歓迎会、交流会の場を設けることで、従業員同士の信頼関係を構築する場を提供できます。近頃は、従業員がゲーム感覚で楽しめるWebイベントをチームビルディングで開催する企業が増えてきました。

(参考資料:株式会社エイムソウル「WEBイベントを盛り上げる!社員同士のチームビルディング・相互理解を促進する『同僚推理ゲーム』をリリース」)

稼働状況を把握する

リモートワーク環境下では、従業員の稼働状況が分かりにくく正当な評価ができません。しかし、従業員の勤務状況を監視すると、大きな負荷になりストレスの原因となります。この問題を解決するために、システムを導入して稼働状況を把握する企業が増えています。

PCやシステム上で取得できるログを取得すれば、誰がどのような業務を行っているのかを可視化できます。可視化した情報を参考にすれば、適切な人事評価も行えます。

参考資料:クラウドWatch「自動化できるものは自動化、残ったものはリモートから作業――フィックスポイントの「Kompira Greac」

営業プロセスを可視化してマネジメントに活かす

営業業務はブラックスボックス化しがちですが、デジタルツールの登場により可視化できるようになりました。通話内容の録音、商談内容の録画をすることで、誰がどのように営業しているか把握できます。

また、通話内容や商談方法が適切であるか判定するAI技術も登場しています。AI技術を活用することで、成績が良い従業員と成績が悪い従業員を比較できるようになりました。このような技術で営業プロセスを可視化して、マネジメントに活かす企業が増えてきています。

自己学習の場を提供する

リモート環境下ではコミュニケーション不足に陥りますが、キャリア志向の方は新たなスキルを学んで成長したい意欲を持っています。このような意識が高い従業員の意欲を損なわないように、自己学習の場を提供してあげましょう。近頃は、福利厚生としてオンライン学習サービスを提供する企業が増えています。

ジョブ型の人事評価制度を導入する

新たな人事評価制度として、ジョブ型雇用制度が注目を浴びています。Works Human Intelligenceの独自調査によると、ジョブ型雇用に興味を持っている企業の割合は、58%となりました。約6割の企業がジョブ型雇用に興味を持っています。能力や結果に応じた人材評価制度に切り替えることで、どのような労働環境でも従業員の積極的な行動が促せます。

(参考資料:@DIME「国内大手企業の「ジョブ型雇用」導入率は?」)

ゼロトラストセキュリティでリスク対策を行う

SaaS企業の約4割が、セキュリティ面の不安からリモートワークを実施していません。この問題を解決する方法として、ゼロトラストセキュリティが登場しました。ゼロトラストセキュリティを活用すれば、企業のサーバーだけではなく、接続してデバイスのセキュリティを担保できるようになります。

例えば、セキュリティリスクのあるデバイスを検知したら、そこから接続をシャットダウン。IDとパスワードを使用したユーザー認証に加えて、デバイス認証を行うことで、リモートワークのセキュリティリスクを解決していけます。

(参考資料:ITmediaNEWS「Oktaと秘文で“リモートワーク特有”のセキュリティリスクを回避 ゼロトラストセキュリティのファーストステップを実現」)

[SaaS業界]リモート環境下で営業組織力を上げた成功事例

リモートワーク環境下での営業組織力の上げ方をご紹介しましたが、実際に取り組んで成果を出している企業の取り組み方を把握しておきましょう。ここでは、リモート環境下で営業組織力を上げた成功事例をご紹介します。

株式会社ユーザーベース社

情報共有とナレッジ共有を強化して組織力を向上

株式会社ユーザーベースは、組織全体の営業力を上げるために、情報共有を強化しています。CRM(顧客管理システム)に入力する顧客情報や対応履歴だけではなく、通話内容や商談情報まで共有しています。

成果が見込めている担当者の営業手法をナレッジと共有すれば、組織全体の営業力の強化ができます。このような方法で、リモートワーク環境下でも営業組織力を上げることに成功しています。

参考資料:MiiTel導入事例「株式会社ユーザーベース」

アドビ株式会社

社内イベントを活発に行うことでエンゲージメントを強化

アドビ株式会社においては、社内コミュニケーションを活性化させるため、社内イベントを活発に行っています。サマーパーティーやファミリーデーなどに対して多くの予算をかけて実施しています。さらには、社内イベントの参加率もエンゲージメントを図る上での評価軸にしています。自ら積極的にかかわっていくという姿勢が、社内イベントの盛り上がりにつながり、さらにはエンゲージメントを強化させ、2021年度第4四半期には過去最高の業績を達成しました。

 

参考資料:コミュニケーションから人事評価を導き出す「チェックイン」とは? | アドビ株式会社

(参考資料:アドビ、2021年第4四半期および通年の業績と、今後10年間の成長戦略の概要を発表)

セールスフォース・ドットコム社

リモートマネジメントに必要なコミュニケーション設計を行う

セールスフォース・ドットコム社では、リモートワークにおいてメンバーが孤立しやすいため、メンバー同士やメンバーとマネージャーの接点を増やすようなコミュニケーション設計を行っています。1on1において、アイスブレイクをしっかり行って、互いの健康状態も確認するなど、メンバーの心をほぐすコミュニケーションを実践したり、自由参加で業務について相談できる、よろず相談会の時間を設けることで、モチベーションの向上を図っています。

参考資料:オンラインでも営業の本質は変わらない――パーソルラーニングとSalesforceに学ぶマネジメント

リモートワーク環境下の教育体制を実現

セールスフォース・ドットコム社では、リモートワーク環境下でも、社員研修を徹底して習得できる体制を実現しています。具体的には、新入社員や中途社員に関しては、Trailheadというオンライントレーニングを活用することで、オンラインでセルフラーニングができる仕組みがあります。学習の進捗度については、マーケティングオートメーションツールが裏側で動いており、管理者は、誰がどのコンテンツを見ているのかということをチェックすることができます。さらに、社内で良い提案ができた営業が、デモなどを動画にしてアップ、それを共有する仕組みもあり、チーム全体でノウハウ共有ができます。最近では教育マネジメントのソリューションとSFAを組み合わせることで、営業成績との相関を見られるようにもなってきています。

参考資料:オンラインでも営業の本質は変わらない――パーソルラーニングとSalesforceに学ぶマネジメント

参考資料:リモートでも加速できる。セールスチームマネジメントの秘訣

 

まとめ

SaaS企業では、リモートワーク環境下でも営業組織力を上げるために、積極的にデジタルを活用しています。最後に、どのような方法があるかをおさらいしておきましょう。 

[リモートワーク環境下で営業組織力を上げる方法]

  • 仮想オフィスや仮想会議室を使用する
  • 社内メディアを定期的に配信する
  • チームビルディングを実施する
  • システムで稼働状況を把握する
  • 営業プロセスを可視化してマネジメントに活かす
  • 自己学習の場を提供する
  • ジョブ型の人事評価制度を導入する
  • ゼロトラストセキュリティの対策をする 

ぜひ、これを機会にリモート環境下でも行える営業組織力を上げる施策に取り組んでみてください。