Googleのグループ会社が参入!保険業界で急務となったDXの取り組み方

損保ジャパン日本興亜総研レポート「保険会社のデジタル化に関する意識調査」では、75%の保険会社が「デジタル化による革新が起きると予測している」と回答しており、59%の保険会社が「GoogleやAmazonが販売チャネルに進出することを懸念している」と回答しています。

実際に、Google親会社Alphabetのヘルスケア事業を行うVerilyは子会社Coefficientを設立。企業向けに社員の健康保険をストップロス型保険(医療費が急増した場合にその支払いを保険会社が補う仕組みの保険)で提供することを発表しました。大手IT企業による保険業界への参入件数は増えてきています。

保険会社はどのように立ち向かうべきなのでしょうか?今後、保険業界はさらに競争激化することは必須であり、保険会社はDXに取り組んでいかなければ生き残れません。そのため、国内外の保険業界におけるDX活用事例を把握して対策を検討しましょう。ここでは、保険業界のDXの取り組み方について紹介します。

参考:Verily Report「Announcing Coefficient, a Verily Subsidiary Focused on Employer Stop-Loss and Backed by Swiss Re Corporate Solutions」

 

保険業界でDXが求められる理由

まずは、保険業界がDXに取り組まなければいけない理由について解説します。

IT企業の新規参入による競争激化の中で勝つためには?

Googleが保険事業に参入を発表して大きな話題を集めましたが、国内では政府が健康増進の推進を提唱しています。そのため、保険業界でも健康増進型保険に注目が集まっています。

健康診断・ストレスチェック・長時間労働管理を実施できるクラウドサービスも登場しました。これらのサービスを活用して、社員の健康データを活用する企業が増えてきています。

クラウド型健康管理システムCarelyを開発する株式会社iCAREは、約15億円の資金調達に成功するなど、保険業界に参入するIT企業には大きな期待が寄せられているのです。このように、保険業界に新規参入するIT企業(インシュアテック)が増えてきており、競争激化の時代を迎えても生き残るためには、DXに取り組む必要が出てきています。

(参考:PETIME「15億円調達のiCARE、生命保険領域/インシュアテックに新規参入」)

国内市場縮小でコスト削減が求められている

保険業界の国内市場は、少子高齢化や生産労働人口の減少、自動車保有台数や住宅着工件数の伸び悩みなどで縮小しています。そのため、保険業界の国内市場の拡大は期待できません。このような背景もあり、大手保険会社は海外進出による業績拡大を狙っているのです。

国内での保険事業は収益を最大化させるために業務の効率化を図り、コストを削減することが求められています。そのため、デジタル技術を積極的に活用していく必要があるのです。

参考:MS&ADホールディングス「保険業界の今後」

 

[国内]保険業界DXの成功事例

保険業界がDXに取り組まなければいけない理由を理解して頂けたかと思います。実際にDX化推進に成功している事例を把握して、DXに取り組んでいきましょう。まずは、国内の保険業界DXの成功事例を紹介します。

アフラック生命保険:音声文字認識、RPA等で業務効率化へ

アフラック生命保険はデジタルイノベーションに成功している保険会社として注目を集めています。顧客との会話内容をAI解析させて、説明すべき内容をアドバイスする営業サポートAIや、3Dアバターの顧客応対向けのチャットボットなどを導入。

さまざまなデジタルを活用していますが、紙に記載された文字をテキストデータに自動的に変換できる「AI- OCR」、手順が決まったパソコン作業を自動化する技術の「RPA」を積極的に採用して業務効率化を目指すこと発表しました。このようなアフラック生命保険の動向は、大きな注目を集めています。

※AI -OCR…契約書に記載された文字を自動で読み取るシステムのこと。保全業務にAI- OCRを導入すると契約変更や保険金…給付金の支払いの過程で行う点検業務を自動化することができる。

※RPA…事務作業の自動化を実現するソフトウェアロボット。基幹システムに契約内容を転記する作業を自動化できる。RPAを利用すれば、反復性の高い事務作業が自動化することができる。

参考:日経XTECH「成果連発!アフラックのDX革命」

参考:日経XTECH「保険契約の変更業務から紙をなくし自動化、アフラックが採用した3つの技術」

損保ジャパン:AIによる保険金自動算出でサービス品質の向上

国内で起きた突発的な集中豪雨は、大きなニュースにもなりました。これまで、水害の保険金を算出するためには保険会社による現地調査が必要で、1週間程度かかるという課題がありました。

この課題を解決するために、損保ジャパンはAIを活用した保険金自動算出ツールを開発。スマートフォンで被災した部屋を撮影するだけで、支給される保険金の目安を早期に確認できようになりました。この目安額を参考にして、早期の復旧に着手できるようになり話題を集めました。

(参考:JIJI.COM「日本初の水害のAI保険金自動算出サービス「SOMPO水災サポート」の提供開始」)

三井住友海上火災保険:保険金支払業務の簡略化

2019年に販売が開始されたドライブレコーダー付きの自動車保険では、AIがレコーダーの映像から事故が起きた状況を正確に教えてくれます。従来は、事故が起きた場合は、保険契約者に電話でヒアリングを行っていましたが、その必要性は薄れてきています。

2021年度からは、事故の対応状況はレコーダーで収集してAIで解析。スマホで保険金手続きが完結するサービスが始まります。このように、AI解析を活用すれば、従来行っていた確認業務を簡略化することができるのです。

(参考:日本経済新聞「損害保険会社がDXで実現できる社会貢献とは?」)

[海外]保険業界DXの成功事例

国内保険業界におけるDXでの成功事例を紹介しましたが、海外ではさらに先行したDXの事例があります。ここでは、海外の保険業界におけるDX成功事例を紹介します。

教保生命:引受判断の評価時間を回答システムで短縮

韓国の教保生命は、保険引受の効率化を支援するためにBARO(Best Analysis & Rapid Outcome)と呼ばれる回答システムを開発しました。BAROが受け持つのは単純なケースの引受判断で、評価時間を最小限に抑えて、引受判断効率化ができるように設計されています。

この回答システムを利用して、簡易的な引受判断時間を短縮し、より複雑な引受判断に人員を割けるような体制を整えています。

参考:損保保険「諸外国の保険業界における IT 活用の動向」

Cover Financial:コンサルティング型プラットフォーム

Cover Financialはテンセント社も資金調達するなど注目を集めているインシュアテック企業です。Cover Financialが提供するアプリやウェブサイトにある質問に答えると、最適と思われる保険を数種類提案します。価格順で並んでいるため、提示された保険を比較検討しやすいと評判です。

自分自身で保険を選ぶことも、販売資格者とチャットで相談することもできます。販売資格者に相談をすれば、細かい保険条件も調整が可能です。また、保険契約後に新しい保険が登場し、切り替えた方が良い場合はアプリの通知で知らせてくれるため、必要な保険だけに加入ができると大きな注目を集めています。

参考:損保保険「諸外国の保険業界における IT 活用の動向」

Leadsurance:マーケティング搭載チャットボットで営業自動化

保険会社向けMAツールを開発しているLeadsuranceが提供するチャットボットを導入する保険会社が増えています。Leadsuranceが提供するチャットボットには、マーケティング支援機能が搭載されており、24時間365日対応できるチャットボットの基本機能に、見積提供や顧客に見合う商品情報の提供まで自動で行える機能が完備。マーケティングから営業まで自動化できるツールとして、米国保険会社から話題を集めています。

参考:Leadsurance公式ホームページ

保険業界の国内市場は縮小する一方で、海外進出を目指す保険会社も出きています。競争激化する市場でもビジネス機会を得るためにDXに取り組みましょう。国内・国外の大手保険会社では、さまざまなテクノロジーが導入され始めています。

  • AIOCR、RPA
  • AI保険金自動算出ツール
  • オンライン保険相談サービス
  • コンサルティング型プラットフォーム
  • マーケティング搭載型チャットボット

 

ぜひ、導入事例を参考にして、DX化に取り組んでみてください。