アフターコールワーク(ACW)の効率化とは?具体的な改善方法と企業事例

アフターコールワーク(ACW)とは、コールセンターにおいて業務効率化や応対品質改善を図る際に、注目すべき指標のひとつです。顧客に左右されやすい平均通話時間(ATT)とは異なり、ACWはコールセンターが主体的に短縮しやすいものです。まずはACWに着目し、後処理作業を見直すことからはじめてみましょう。

本記事では、アフターコールワーク(ACW)の意味と重要性、効率化を図るための具体的な手法と企業事例について紹介します。

そもそもアフターコールワーク(ACW)とは?

まずは、ACWの重要性について解説します。

ACWはオペレーターが顧客との通話を終えた後に、応対記録のシステム入力や、商品の注文処理などを行う等の後処理作業にかかった時間の平均値を指します。

問い合わせの内容や会話のペースなど、顧客の影響を大きく受ける平均通話時間(ATT)に対して、ACWはオペレーターのスキル向上や処理方法の最適化によって短縮が可能なことから、多くの企業がこのACWを重要視し、効率化するために創意工夫を凝らしています。

つまり、ACWを減らすことで、生産性の向上、コスト削減、顧客満足度の改善を図ることができます。

一方で、ACWを短縮できないコールセンターでは入力業務が煩雑であったり、他部署との連携に問題があったり等のボトルネックが推測されるので、業務プロセスの見直しが必要になります。

※ATT…平均通話時間。Average Talk Time(アベレージ・トーク・タイム)の略。顧客との通話にかかった平均時間。

※AHT…平均処理時間。Average Handling Time(アベレージ・ハンドリング・タイム)の略。電話を受けてから応対が終了するまでにかかった総時間の平均時間。

(参考:Sisense”Average After-Call Work Time”)

(参考:コンタクトセンターの常識!AHT、ACW、ATTとその短縮について

(参考:コールセンターの評価基準「ACW」とは丨意味・短縮のポイントを解説|トラムシステム

(参考:コンタクトセンター コンタクトセンターにおける後処理時間を減らすポイントを解説 2020.08.12 コンタクトセンターにおいて後処理時間を減らすことは

ACWを減らすために取り組むべきポイント


ここでは、ACWを短縮するための具体的な取り組み方法を紹介します。

後処理に時間がかかる原因は、使用しているツールの仕様からオペレーターのスキルに依存するものまで様々です。まずは、原因を正しく把握することが肝心です。その上で、的確な施策を検討することが必要です。

① オペレーターのスキル向上を図る

ACWの短縮のみをオペレーターに強く要求すると、オペレーターの心理的負担になり、

ミスを増やす要因になります。ミスの増加は作業効率低下、待ち時間の増加、顧客満足度の低下につながります。そのため、タイピングスピードを上げるための研修や、依頼内容をわかりやすくまとめるための文章力向上の勉強会を実施するなど、オペレーターのスキル向上を図ることで、ACWの改善を考慮しましょう。

個人の能力を高めてもACWが改善しない場合は、処理フローやルールが複雑すぎる可能性があります。入力すべき情報を見直す、明確なルールを定めて個人差が出ないようにするといった対策を講じ、無駄な後処理に費やす時間を削減しましょう。

② 処理フローや入力項目の見直し・改善

処理フローや入力項目について定期的に見直しを行って、そもそも必要ではない処理がないか確認をする必要があります。その際には「ECRSの原則」というフレームワークに沿って考えるとよいでしょう。

≪ECRSの原則≫

・Eliminate(排除)

作業をやめても支障はないか?工程や作業の目的そのものに意味があるのか?を検討します。

・Combine(結合)

類似の業務を結合し集中化すると、効率が良くなります。Eliminate(排除)と同様、投入するコストも手間も少なく、導入及び実行における障害も少なく、実施も容易です。

・Rearrange(入替)

上記、Eliminate(排除)とCombine(結合)が終わった後、次にRearrange(入替)を検討しましょう。工程順や作業順を入れ替えたらどうかを検討します。また、全体最適化の観点から、部門間で業務移管をすることも検討に入れます。

・Simplify(簡素化)

最後に検討する視点が、Simplify(簡素化)です。業務実態を測定・分析し、もっと簡単な方法でできないかを検討します。

③システム導入よる効率化

コールセンターを効率化するためにシステム導入する事例もあります。

・AIチャットボットの導入

チャットボットとは、顧客とオペレーターがチャット画面を通してリアルタイムでやり取りできるコミュニケーションツールのことです。顧客対応時間拡大や人件費削減、顧客がより気軽に相談できるといったメリットから、ここ最近、さまざまなサイトで見かけるようになりました。

実際、オペレータによる有人対応とチャットボットによる無人対応のハイブリッド式を取り入れている企業が多いようです。自動回答では対応しきれなかった案件をオペレーターが引き継ぐ場合でも、チャットで入力された内容はテキストデータとしてそのまま残るため、後処理時間を短縮できます。

【ライフネット生命保険株式会社】

LINEやFacebook Messengerを使って、保険診断や保険見積もりができるサービスを提供。ガイダンスに従って生年月日や性別などを入力すると、自分に合った保険を自動で案内。必要に応じて有人対応に切り替わり、保険プランナーとチャットで保険相談を行うことができます。

SBI損害保険株式会社

自動車保険のトップページにチャット対応窓口を設置。平日の昼間はオペレーターが対応し、夜間や休祝日にチャットボットを導入。オペレーターの負荷を軽減しつつ、ユーザーに24時間365日のサポート提供を可能にしています。

【横浜市】

横浜市ではゴミに対する取り組みのPRを行うため、ゴミ分別を案内するチャットボットを運営。総務省のデータによれば、コールセンターに比べて数百分の一のランニングコストで、コールセンター営業時間外の問い合わせもカバーしています。

 ・AIシステムの導入

音声認識エンジンによる自動テキスト化や、CRMによる部署間の顧客情報共有により、後処理の時間を短縮することができます。AIシステムを導入し、ACWの効率化を実現している企業事例を紹介します。

【オリックス生命保険】

同社コールセンターでは、オペレーターは通話中にメモをとり、通話完了後にシステムに入力。案件が複雑になると、ACWに3分以上かかることもよくありました。

AIシステム導入後は、メモの作成や応対ログの聞き起こし、申し送り事項の書き出しといった一連の作業は自動化され、作業工数はほぼゼロに削減。オペレーターの業務量は大幅に削減され、人件費の抑制につながっています。

【ソニーネットワークコミュニケーションズ】

同社では全国8拠点、1400席のコールセンターを運営。オペレーターの離職率が高く、入れ替わりが激しいため、研修コストが増大。対策が急務となっていました。

AIシステム導入により、問い合わせ内容の文章化、回答の提案を行い、問い合わせ1件にかかる後処理時間を平均90秒短縮に成功。対応時間の削減により、人件費の削減が見込まれる。通話内容の可視化により、オペレーターの理解向上、対応品質の均一化も期待できます。

【ワークビジョン】

同社コールセンターでは21名のオペレーターが顧客をサポート。事業拡大に伴い、応対データ登録に費やす時間が増加していることが業務課題として抽出されました。

AIシステム導入後は、ACWが10.9分から7.4分へと短縮。32%の改善効果を得ることに成功した。オペレーターからは、後処理業務の効率化に加え、履歴登録の際に録音を聴き直す手間が省け、 会話の要点が掴みやすくなったことが評価されている。

(参考:コンタクトセンターの常識!AHT、ACW、ATTとその短縮について

(参考:コールセンターの評価基準「ACW」とは丨意味・短縮のポイントを解説|トラムシステム

(参考:コンタクトセンター コンタクトセンターにおける後処理時間を減らすポイントを解説 2020.08.12 コンタクトセンターにおいて後処理時間を減らすことは

(参考:コールセンター研修 | 定着する社員研修ならリカレント

(参考:チャットボットの最新導入事例を成功事例と失敗事例に分けて紹介! | sAI Chatブログ

(参考:ECRS(改善の4原則)

まとめ

コールセンターの応対品質改善や業務効率化を図る上で、ACWの見直し・改善は真っ先に手をつけるべき重要な課題です。効率化を図るための具体的な手法は以下になります。

・オペレーターのスキル向上を図る

・処理フローや入力項目の見直し・改善

・システム導入よる効率化

ただし、システム導入にあたっては、目的や目標にシステムがマッチしているか、コスト以上の効果が見込めるか、きちんと見極める必要があります。

業務プロセスを見直すだけでも効率的な改善を行うことはできます。まずは、できることから始めてみてはいかがでしょうか。

【参考】インサイドセールス成功事例に関する記事

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