製薬業界の大競争時代!Withコロナ時代の新たな営業方法とは?

医師が自身で情報収集するようになり、製薬会社の業務見直しでMR(医薬情報担当者)が減少しています。2020年のMR数は前年同期比4.6%減の5万7,158人で、6年連続の減少になりました。また、新型コロナウイルス感染拡大は医療業界に大きな影響を与えていますが、同時に製薬業界も影響を受けており、従来の営業手法から新たな営業手法に切り替わろうとしています。

一方で、AI創薬による開発期間の短縮に成功する製薬会社が登場しておきており、営業活動面でもデジタルチャネルを活用した製薬会社の躍進が止まりません。このような環境下、営業で成果を上げるには、どのような施策を検討していけば良いのでしょうか?本記事では、Withコロナ時代の新たな営業方法について解説します。

新型コロナウイルスにおける製薬業界への影響

まずは、新型コロナウイルスにおける製薬業界への影響を紹介します。

感染防止による訪問自粛要請

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、病院側からMRに訪問自粛要請があり、テレビ電話を活用した情報提供が広がっています。2020年4月には、日本製薬団体連合会(日薬連)が医療機関訪問を自粛するように傘下団体に要請しました。

政府が緊急事態宣言を発令したことにより、副作用情報や新薬の使い方などで医療機関側から要請があった場合以外は、訪問自粛と大きな影響を受けています。

  (参考資料:日本経済新聞「製薬業の国内MR、6年連続減少 デジタル化で削減も」)

参考資料:日本経済新聞「日薬連、MRの医療機関訪問を自粛要請」

情報収集を自身で行う医師の増加

コロナ禍で急成長している企業が、医療関連情報サービスを提供しているエムスリー株式会社です。2020年に株価は3倍に上昇し、時価総額で約6兆円規模にまで急成長。エムスリーは、自社のプラットフォームを通じて製薬会社や医師、患者の情報アクセスを支援しています。

WEBで医療情報収集を自身で行う医師の増加に踏まえて、訪問自粛が追い風となり医療関連情報サービスが急成長しています。

(参考資料:Bloomberg「ソニー出資のエムスリー、4兆円企業に急成長-新型コロナが追い風」)

デジタル化加速による営業手法の変化

病院や日本製薬団体連合会がMR訪問自粛を要請しており、非対面型の営業やデジタルを活用した情報提供など営業手法が変化してきています。デジタル化は加速しており、社内でデジタル人材を育成するだけではなく、中途採用で強化したり、IT企業と競業したりする製薬会社も増えてきています。

参考資料:Adobe Blog「コロナ禍でデジタルシフトが加速! 製薬会社のDX状況レポート #AdobeSign  #AcrobatDC」

 

Withコロナ時代!製薬業界の営業のポイント

製薬業界もデジタル化推進が加速していますが、Withコロナ時代の営業手法のポイントを押さえておきましょう。

1. オンライン営業でエリア拡大を狙う

MR訪問自粛の要請でテレビ電話を活用した情報提供が広がりを見せています。訪問自粛は製薬会社にとって大きな打撃を与えていますが、テレビ会議を活用すれば営業エリアの拡大が狙えます。業務効率化も行えるため1日の商談件数を増やすことも可能です。

Withコロナ時代に業績を伸ばす企業は、デジタル化推進を行い、医療機関だけではなく薬局にも営業エリアを拡大しているのです。

(参考資料:日本経済新聞「製薬業の国内MR、6年連続減少 デジタル化で削減も」)

2. オンライン営業のトーク力を磨く

オンライン営業は業務効率化が図れる一方で、相手の表情が捉えにくく、その場の雰囲気も分かりにくいです。一歩通行のコミュニケーションになりがちなので対面営業と手法が異なります。トークの流れや話し方、速度など気を付けて話さなければいけません。

しかし、デジタル化推進により通話データも分析できるようになったため、成約に至る通話も解析できます。解析結果からトークスクリプトを作成して、成約率を上げている製薬会社も登場しています。

(参考資料:AnswersNews「緊急事態宣言解除から半年あまり…新型コロナ MR活動のいま【匿名座談会】」)

3. 医師が求めている情報を的確に届ける

従来は対面営業でMR自身が感覚的に拾っていた医師の課題やニーズですが、MR訪問自粛要請や医師自身による情報収集で状況が大きく変化しています。医師が求める情報を適切なタイミングで届けなければいけません。

また、医師のデジタル選好度により活用すべきデジタルチャネルも変わってきており、どのようなデジタルチャネルを活用すべきか分析が欠かせなくなってきています。

参考資料:AnswersNews「変わる製薬企業と顧客の関係|鼎談連載「DXの向こう側」(1)」

4. CRMを導入して顧客情報分析を行う

新型コロナウイルスの影響を受けて、CRMを導入する製薬会社が急増しています。オンラインとオフラインで得た情報を管理して、各医師が求めている情報を分析。すべてのアクティビティがCRMに登録されるため、医師の課題やニーズを把握することができます。

また、MR訪問自粛の状況が続く中で、リモートからの署名機能が搭載されているCRMも登場してきています。製薬会社は、徹底した情報管理・情報分析が成否を左右する時代を迎えているのです。

参考資料:Veeva「新型コロナウイルスのインパクトいま製薬企業に求められる変化とは?」

5. MAを導入して業務効率化を図る

医療関係者向けのオウンドメディアを運営しているファイザーは、他社に先駆けてマーケティング・オートメーション(MA)を導入しました。オウンドメディア上の医師側のログ情報を解析して、医師が求めている情報を適切なタイミングで届けているのです。デジタルチャネルだけではなく、必要に応じて講演会も開催し、ブランディング強化も行ってきました。

MAでマーケティングの業務効率化をすることで、医療機関だけではなく薬局にも営業を実施するなど、営業拡大にも成功しています。少ないリソースでも、営業エリア拡大が行えて生産性向上が見込めることもMAツールの魅力です。

(参考資料:AdverTimes「コロナ禍でさらに加速! 製薬業界におけるデジタルブランディングとマーケティング」)

Withコロナ時代!製薬業界の営業の成功事例

イメージ写真です。実際の医療シーンではありません。

新型コロナウイルスの影響でMR訪問自粛となり、非対面型営業に移行しています。コロナ禍で業績を伸ばしている製薬会社は、どのような営業を実施しているのでしょうか?ここでは、Withコロナ時代における製薬業界の営業の成功事例を紹介します。

ファイザー:MAツールを駆使して営業エリア拡大

ファイザーは、他社に先駆けてマーケティング・オートメーション(MA)を導入しました。医療従事者に向けた情報提供、オウンドメディア構築をしてきましたがログ情報を取得して各医療従事者が求めていることを解析し、適切なコミュニケーションを行っているのです。

医療従事者が求めている情報を適切なタイミングで届けることに徹底しています。MAツールでマーケティングを自動化することで、医療機関だけではなく薬局にも営業しており、営業エリア拡大に成功しています。

(参考資料:AdverTimes「コロナ禍でさらに加速! 製薬業界におけるデジタルブランディングとマーケティング」)

 

新日本製薬:オンオフ連携施策で営業力アップ

新日本製薬はオンオフ連携施策で営業力アップに成功しています。双方の営業活動で得た情報はCRMで管理。

オンライン戦略はEC展開やデジタルマーケティングの強化、インフルエンサーを活用した知名度アップなどの施策に取り組んでいます。また、オフライン戦略では会話を録音したコミュニケーションの強化を実施。成約に繋がるトークスクリプトを作成するなど生産性向上にも取り組んでいます。

参考資料:exciteニュース「[注目トピックス 日本株]新日本製薬 Research Memo(7):2023年9月期に売上高400億円以上、経常利益率10%以上の達成を掲げる」

エムスリー:次世代MR「メディカル・マーケター」を提供

新型コロナウイルスでMR訪問自粛が要請される中で、急成長しているのが医療系IT企業のエムスリーです。2020年12月に、エムスリーの時価総額は6兆円になり武田薬品工業を超えました。

エムスリーは、製薬企業の営業やマーケティング活動の変革を実現するメディカルマーケター事業を設立しました。デジタル化推進が出遅れている製薬業界の救世主として、注目を集めています。

多くの医療関係者を囲い込む「m3.com」を活用したマーケティング支援ツール「MR君」が主力事業となっており、コロナ禍での営業効率化に貢献しています。

参考資料:週間東洋経済「快進撃エムスリーを大解剖」

まとめ

今回は、Withコロナ時代の営業力アップ方法について解説しました。MR訪問自粛要請や医師自身による情報収集などにより、従来の営業手法から新たな営業手法へ切り替えなくてはいけなくなりました。しかし、デジタル推進で業績を伸ばす製薬会社も登場しているので、ピンチをチャンスに変えることもできるはずです。最後にポイントをおさらいしておきましょう。

 

【Withコロナ時代の営業手法】

  1. オンライン営業でエリア拡大を狙う
  2. オンライン営業のトーク力を磨く
  3.  医師が求めている情報を的確に届ける
  4.  CRMを導入して顧客情報分析を行う
  5.  MAを導入して業務効率化を図る

 ぜひ、これを機会に営業手法の見直しを行ってみてください。