製造業界で注目を浴びるインサイドセールスのやり方を具体的に解説!

製造業の営業スタイルは、新型コロナウイルスの影響を受けて大きく変わりました。ダイレクトメールやFAXは見てもらえず、電話をかけても繋がりません。また、展示会に出展しても、コロナ前後で比較すると来場者が減少しました。コロナ禍で営業に苦戦するメーカーが増える一方で、売上を伸ばすメーカーも存在します。これらの違いの一つとしてコロナ禍でも、安定して商談創出する仕組みがあるか否かがポイントになってます。今回は、コロナ環境下においてもメーカーの製品受注に繋がる営業手法として、近年注目されてきているインサイドセールスについて解説します。

製造業でインサイドセールスが注目される理由

最初に製造業でインサイドセールスが注目をされる理由をご紹介します。

従来の営業手法が通用しない

製造業界の営業手法は、オフラインからオンラインへ変化してきています。2020年8月に株式会社マーケライズが実施した「製造業界の営業・販促活動におけるコロナ禍の影響に関する調査」では、77%のメーカーが「マイナスの影響を受けた」と回答しました。マイナスの影響とは、展示会の延期・注視(92%)や商談数の減少(74%)によるものです。

新型コロナウイルス感染防止でリモートワークが普及し、ダイレクトメールやFAXが届かなくなり、本社に電話をかけても担当者に繋がりにくくなりました。このような影響から従来の営業手法が通用しなくなってきており、新しい営業手法のインサイドセールスが注目されてきています。

顧客ニーズへの対応の重要性が増した

2020年版ものづくり白書」では、製造業界は製品の品質をめぐる競争が激しくなってきているため、顧客のニーズに対応した製品が求められると述べられています。顧客ニーズに素早く対応しなければなりません。

激しく変化する顧客ニーズはデータを解析して理解し、ノウハウ共有やリードタイム短縮により競争力を持たなければなりません。データとデジタル技術を活用して顧客の要望や課題を把握し、解決策を提案する営業手法がインサイドセールスになります。

営業人材の不足

エン・ジャパンの調査によると、もっとも人手不足な職種として、営業職が挙げられています。営業職の不足を感じる企業は35%にのぼっており、営業職の人手不足は多くの企業にとって問題であると感じられているようです。中小企業白書においても、製造業のうち約4割の企業が中核人材において不足感が最も強いのは「営業・販売サービス」と回答しています。

(参考:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap4_web.pdf

(参考:https://product-senses.mazrica.com/senseslab/column/labor-shortage#i-3

(参考:https://at-jinji.jp/blog/24732/

製造業界で注目を浴びるインサイドセールスとは

製造業界で注目を浴びるインサイドセールスとは何なのでしょうか?新しい営業手法に切り替える効果や注意点を把握しておくと、失敗を防止できるため覚えておきましょう。ここでは、製造業界で注目されるインサイドセールスについて解説します。

インサイドセールスとは

インサイドセールスとは、見込み顧客に対してメールや電話、Web会議を活用しながら非対面で行う営業活動をいいます。顧客が抱える要望や課題をヒアリングしながら、顧客も気づいていなかった課題を顕在化することで案件化させるリードナーチャリングを行います。

インサイドセールスでは、顧客情報や対応履歴、Web行動履歴を参考にしつつ、顧客の要望や課題を把握してアプローチするものなので、顧客ニーズに対応した製品の提案ができるようになります。自社製品の良さをアピールする営業スタイルから、顧客ニーズをヒアリングして課題解決する営業スタイルへ営業手法が切り替わり始めています。

インサイドセールスを導入する効果

インサイドセールスを導入する効果には、次のようなものが挙げられます。

・コロナ禍において求められる営業手法が実現できる

新型コロナ感染症の拡大に伴い、非対面・非接触・脱労働集約が求められてきています。インサイドセールスであれば、非対面・非接触・脱労働集約のすべてが実現できます。

・顧客ニーズに対応した営業ができる

インサイドセールス部門は、顧客情報を一元管理して、各顧客がどのフェーズにいるかを解析して適切なアプローチをしていきます。このような営業手法に切り替えることで、顧客ニーズに対応した営業ができます。

顧客の検討タイミングが合わずに、営業担当者がフォローをやめた見込み顧客が、他社の製品を導入したというケースはよくある話です。そのため、見込み顧客との関係育成を主業務とするインサイドセールス部門を立ち上げて、顧客との関係を育成していく必要があります。

・営業人材の不足解消

インサイドセールスを導入すれば、製造業においての営業人材不足を解消できます。その理由は、電話営業や訪問営業だけではなく、メール配信やコンテンツ提供などを含めた営業活動を行うことで、従来の営業方法よりも営業業務を効率化できるためです。

また、営業プロセスを「マーケティング部門」「インサイドセールス部門」「営業部門」「カスタマーサクセス部門」で分業化することにより、各部門がコア業務に集中できるようになります。従来の顧客獲得から契約まで、1人の営業担当が役割を担う営業手法よりも効率的に営業できます。

・営業業務の標準化と質の向上

インサイドセールスを導入すれば、営業業務の属人化が防止できます。その理由は、デジタルツールの登場により顧客の行動履歴を可視化できたり、各担当者の営業方法が可視化できるようになったためです。

成果が出せている営業担当者の営業手法を共有したり、契約した商談トークを参考にしてトークスクリプトを作成したりすれば、営業業務を標準化でき、営業全体の質を高めることができます。

インサイドセールスを導入する場合の注意点

インサイドセールスを導入する場合は、以下の点に注意してください。

・営業プロセスを再設計する

インサイドセールス部門は、営業プロセスを分業化してコア業務に集中させるために立ち上げるものです。そのため、他部門と連携しながら営業活動を進めてください。

マーケティング部門 見込み顧客の獲得
インサイドセールス部門 マーケティング部門が獲得した見込み顧客との関係を育成して商談の機会を創出する
営業部門 営業部門は、顧客と商談して契約を獲得する
カスタマーサクセス部門 既存顧客は製品を利用する際のサポートをする

 ・見込み顧客をパスする基準を設ける

インサイドセールスは見込み顧客を育成して、見込み度のスコアが高くなった顧客を営業部門へパスします。このような仕組みを整えることで、営業担当者は商談から契約までのコア業務に集中できて成約率が高められます。そのため、見込み顧客をパスする基準は明確に定めておきましょう。

よくある失敗は、インサイドセールス部門のKPIを商談件数に設定してしまい、見込み度の低い顧客まで営業部門へパスしてしまうものです。このような問題が起きないように、見込み顧客をパスする基準を設けましょう。

(参考:Jinjer「インサイドセールス7つのメリット・3つのデメリットを徹底解説」

・デジタルツールを導入する

各部門が連携して営業プロセスを分業化していくためには、意識的な情報共有が欠かせません。

営業プロセスは各部門がコア業務に集中できる一方で、情報共有ミスが起きる恐れがあります。このミスを防止するために、CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)、AI搭載型IP電話などのデジタルツールを導入しておきましょう。例えば、通話内容や賞賛内容を録音・録画しておけば、情報の伝達ミスが起きてもデータを振り替えることで、情報が収集できます。

製造業界のインサイドセールスのやり方

製造業界でインサイドセールスを行う方法は以下の通りです。

  1. 営業効率化に必要なシステムの構築
  2. 顧客情報を一元管理する
  3. アプローチ先の優先順位を決める
  4. アプローチして顧客との関係を育成する
  5. 見込み度合いをスコアリングで計測する
  6. 見込み度合いが高い顧客を営業部門へパスする

それぞれの手順を具体的に解説していきます。

1.営業効率化に必要なシステムの構築

最初に、営業効率化を実現するためにシステムの構築をしましょう。課題を突き詰めれば「優良顧客を効率よく見つけ出して、営業活動を効率化したい」という内容に収斂されるかと思います。具体的なシステム構築方法は下記の図を参考にしてみてください。

 (引用:freet One「営業活動をデジタルを使って効率化する方法」

2.顧客情報を一元管理する

次に、マーケティング部門からパスされた見込顧客の情報を一元管理します。

その理由は、ヘルプページからのお問い合わせやカタログダウンロードのお問い合わせ、展示会の来場者との名刺交換で得られる見込み顧客の情報は、それぞれチャネルが別々だからです。見込み顧客の情報を一元管理することで、顧客別のフェーズ分析がしやすくなります。フェーズ別に顧客情報をまとめれば、営業が効率化できます。そのため、顧客情報を一元管理しましょう。

 3.アプローチ先の優先順位を決める

見込み顧客の情報を一元管理できたら、アプローチする優先順位を決めていきましょう。その理由は、各顧客で購買意欲は異なるためです。商談機会の創出までのフォロー時間や回数、商談設定までの期間が異なります。

購買意欲が高い顧客を優先的にアプローチしていくことで、受注数が伸ばせます。そのため、インサイドセールス部門は、アプローチする前に優先順位を決めましょう。

4.アプローチをして顧客との関係を深める

マーケティング部門からパスされた見込み顧客の中には、見込度合いが低い顧客もいます。このような顧客を育成していく必要があります。

なぜなら、顧客との関係を育成しておくことで、製品導入の検討時に相談されやすくなるからです。そのため、見込み顧客が求めている情報を提供して関係を深めていきましょう。

  5.見込み顧客をスコアリングする

見込み顧客の育成状況は、スコアリングして判断します。スコアリングを基準にすると、受注確度が低い顧客を営業にパスする頻度を減らすことができるからです。製造業界の場合は、例えば以下のように点数を付けてみることから始めてみましょう。

6.見込み度の高い顧客を営業部門へパスする

スコアリングの点数が基準を超えた見込み顧客は、営業担当者へ引き継ぎます。しかし、営業担当者へ見込み顧客をパスしたら終わりではありません。

見込度合いが問題なかったか、定期的に営業担当者からフィードバッグを受け取るようにしましょう。そして、受注確度が高い見込み顧客をパスできるように、業務改善していくことが大切です。

 製造業界のインサイドセールス導入でアポ獲得数が3倍

株式会社中村製作所は、営業担当者のアポ獲得率に格差があることを課題として挙げていました。また、ハイパフォーマーの営業担当者が退職するため営業ノウハウの蓄積が急務となりました。この問題を解決するために、AI搭載型IP電話のMiitelを導入して、ハイパフォーマーの営業担当者のノウハウを可視化することに決めたのです。

MiiTelを導入すれば、通話内容や商談内容を録音・録画できるだけではなく、どのようなフレーズの登場回数が多いかを自動集計できます。また、トーク・リッスン率や会話速度まで数値化、採点でき各担当者の差が比較できるようになります。

同社はMiiTelを活用して、ハイパフォーマーの営業担当者のノウハウを収集して、組織全体に共有しました。このような取り組みでアポ獲得数が3倍に伸びました。同社はアポ獲得数が3倍に伸びた理由について、営業ノウハウが共有できたことで各自の経験値を上げられたためと回答しています。

(参考:MiiTel「株式会社中村製作所 アポ獲得数が3倍に 優秀な人材のノウハウを会社に蓄積して「資産化」を目指す」