保険業界でCRMシステムの導入が加速する理由とは?導入事例を紹介!

CRMシステムの導入が加速していることをご存知ですか?IT調査会社のIDC Japanの独自調査では、CRM市場規模は年間平均成長率5.5%で伸びており、さまざまな企業で導入されています。保険業界でも大手を中心に導入されてきています。

今回は、保険業界が導入すべきCRMの魅力について解説します。この記事を読めば、CRMの活用方法が分かるはずです。ぜひ、CRMシステムの導入を検討している方は、この記事を参考にしてみてください。

保険業界で注目を浴びる「CRM」とは?

保険業界でCRMシステムの導入が加速していますが、どのような効果が見込まれるのでしょうか?まずは、CRMについて解説します。

そもそもCRMとは

CRMCustomer Relationship Management)には、広義と狭義の意味があります。

  • 広義:顧客と良好な関係を構築・維持する施策
  • 狭議:顧客情報を一元管理するデジタルシステム

顧客情報を管理して求めている情報を提供したり見込み度を把握したりすることで、的確なアプローチをするための施策をいいます。ここでは、狭義のCRMについて解説します。

CRMシステムの市場規模

保険業界ではコロナ禍で訪問営業ができなくなり、デジタル戦略が欠かせないものになりました。IT調査会社IDC Japanの独自調査によるとCRMシステムの市場規模は年間平均成長率5,5%で伸びるとされており、2025年には2,448億8,200万円になると述べています。

参考資料:日経XTECH「コロナ禍を経て成長続けるCRM市場、欠かせない顧客接点の改善」

CRMシステムで実現できること

保険会社がCRMシステムを導入すると、以下の効果が期待できます。

顧客満足度アップ

顧客情報を蓄積・分析して、顧客1人1人が求めている情報提供、商品を提案すれば喜んでもらえます。「自分が求めている情報を提供してくれる保険会社だ」「要望を叶えられる保険商品を提案してもらえた」という気持ちは顧客満足度を向上させます。

顧客満足度を上げることができれば「保険の見直しをする際はお任せしよう」と思われ、保険の見直しのタイミングやライフイベントの変化の際にリピートしてもらえます。日本は少子高齢化のため、保険商品の新規契約が獲得しにくくなっており、顧客満足度を上げて既存顧客からリピートしてもらわなければいけません。CRMシステムは顧客満足度アップに貢献するデジタルツールです。

機械損失の防止

デジタルツールでは顧客情報の管理だけではなく、インターネット上の行動履歴を把握できます。メール開封やHP訪問などのログ履歴を取得してスコアリングを行えば、見込み度の高い顧客が誰かが分かります。スコアリングの数値を参考にして、営業の優先度を決めていけば機会損失の防止ができます。

※補足:CRMシステムによっては上記の機能が無い場合があります。その場合はMAツールを補完的に活用し、連携することで実現が可能になります。

他部署との連携

保険会社は営業部門、コールセンター部門で顧客情報を共有する必要があります。また、販売代理店とも情報共有しておくと、顧客に満足してもらえるスムーズな対応ができます。他部門と連携をしておけば、顧客のニーズを素早く把握できるようになり、新たな提案ができることでしょう。そのため、CRMシステムを導入して顧客情報を蓄積し関連部門で共有していく必要があります。

参考資料:BOXIL「保険業界でCRMが注目されるワケ 顧客満足度獲得で売上向上を目指そう」

保険業界でCRMシステムの導入が必要な理由

保険業界でCRMシステムの導入が必要な理由は、主に3つあります。

コロナ禍で保険需要は減少

コロナショックの影響で、非対面ビジネスが推奨され訪問営業ができなくなり、生命保険会社の新規契約の獲得件数が大幅に減少しています。

これからの保険会社は、既存顧客と良好な関係を維持し、ライフステージに合った保険商品を購入してもらえるようにリピーターを確保しなければいけません。そのため、CRMシステムを導入して顧客情報をしっかりと管理する必要があります。

参考資料:朝日新聞「コロナで新契約が急減 生命保険会社の20年度中間決算」

保険商品の顧客ニーズの多様化

保険商品の顧客ニーズは多様化してきており、従来のマス・マーケティング(大量生産・大量販売・大量プロモーション)では成果が見込みにくくなってきました。保険商品は種類が増えて、1人1人の価値観やライフスタイルに見合った保険商品を提案しなければ生き残れない時代となったためです。

これから必要となる営業手法は、One to Oneマーケティングといいます。One to Oneマーケティングとは、顧客情報を蓄積していき、各顧客がどのフェーズにいるかを見極めて適切なコミュニケーションを測る手法をいいます。CRMシステムを導入すれば実現しやすくなります。

参考資料:保険相談サロンFLP「保険相談の多様化時代、保険の販売チャネルまとめ」

ミレニアム世代へのアプローチ

ミレニアム世代の新規顧客を獲得していくには、保険の新商品の開発やアプローチ方法を見直していく必要があります。申込みから給付までの全ての手続きがインターネット上で完結できる保険商品の開発、SNSやLINEでお問い合わせができる顧客接点の設置など、各保険会社がミレニアム世代の顧客獲得に注力しています。

顧客接点は、電話やメールだけでなく、SNSやLINE、チャットなど多岐に渡るようになり、各チャネルを管理するのは想像以上に大変です。また、複数のチャネルを跨ぐお客様もいます。このような複雑化した消費者行動に対応できるように、CRMシステムで顧客情報を一元管理する必要があります。

参考資料:第一生命「ミレニアル世代向け新たな商品ブランド「デジホ」リリース」

保険業界がCRMシステムを活用する際の10つのポイント

保険業界は、積極的にCRMシステムを活用していくべきだと理解して頂けたと思います。実際にどのように活用していけば良いのでしょうか?ここでは、保険業界がCRMシステムを活用する際のポイントをご紹介します。

1.顧客情報の入力はこまめに行う

CRMシステムに顧客情報を入力はこまめに行いましょう。顧客情報の入力漏れがあると、One to Oneコミュニケーションが実現できなくなります。

また、顧客トラブルを回避するために顧客情報の入力だけでなく、通話やオンライン商談の会話なども録音しておきましょう。信頼できる顧客情報を蓄積すればするほど、精度の高い営業が行えます。 

2.見込み顧客のアプローチを自動化する

保険営業担当者が、営業時間に充てられている時間は35%と言われています。メール返信や顧客情報の入力、顧客調査などに65%の時間が充てられているのです。このような業務はデジタルツールを活用して自動化しましょう。

CRMシステムとMAツールを連携すれば、メール配信を自動化できます。また、音声データの録音自動化やテキスト化できるツールを使用すれば、顧客情報の入力業務の負担が軽減できます。日頃の営業業務に疑問を持ち、自動化できる業務は効率化していき、営業に時間を充てるようにしましょう。

 (参考資料:SalesHacker「営業が営業活動に割ける時間は全体のたった35%!生産性を上げる方法を解説」

3.モバイルアプリで外出先でも使用する

お客様と商談中に顧客の最新情報が閲覧できる状態にしておきましょう。保険会社の中には、セキュリティなどの観点から外出先からCRMシステムへアクセスを禁止している企業も存在します。質の高い商談を実現するためにも、外出先からでもCRMシステムを閲覧できるようにしておきましょう。

4.ワークフローを合理化する

保険商品の見込み顧客の獲得から、関係性の育成、商談をワンストップで実現するためには、ワークフローの合理化が欠かせません。CRMシステムと下記のデジタルツールを統合してワークフローを合理化させましょう。

  • MA:マーケティング業務を効率化・自動化するためのツール
  • ヘルプデスクツール:お客様から寄せられるお問い合わせを一元管理、対応業務を効率化するためのツール
  • IP電話:IP回線を利用する電話サービス
  • チャットボット:24時間365日対応のカスタマーサポートを実現するためのツール 

5.メールテンプレートを利用する

見込み顧客に何度も同じメールを送ることもあるでしょう。このような対応業務は、メールテンプレートを使用すれば効率化できます。

AI搭載型のCRMシステムを導入すれば、顧客からのお問い合わせ内容に最適なテンプレートを提案してもらえます。営業担当者はメールテンプレートを使用して、宛名を変更するだけで簡単に返信が送れるのです。このような便利な機能を活用して営業業務を効率化していく必要があります。

6.顧客接点のチャネルを増やす

従来の受付窓口は、電話とメールが主流でした。しかし、このような受付窓口での対応は限界が来ます。この限界を突破するために、顧客接点のチャネルを増やしましょう。受付窓口の業務負担が減らせるチャネルとして、AI搭載型チャットボットが人気です。

また、ミレニアム世代向けにSNSやLINE、アプリなどで保険申込や相談が出来るよう顧客接点のチャネルを増やしていく必要があります。

7.失注した顧客にキャンペーン情報を配信する

保険の営業で失注する場合もありますが、契約に至らない顧客に対してはキャンペーン情報を配信するなどアプローチする必要があります。

例えば、失注から3ヵ月経過した際に、失注した方向けに無料のライフプランニング作成を実施するなどのイベントを計画するなどして需要を掘り起こします。このようなイベント企画は、CRMシステムに顧客情報が蓄積されていることで実現できます。

8.見込み顧客のフェーズを見極める

見込み顧客はフェーズに見合ったアプローチをしていく必要があります。保険商品を具体的に検討している顧客なのか、保険の必要性に感じて興味本位で情報収集している顧客なのかで提供すべき情報は異なります。

見込み顧客のフェーズを見極めて、アプローチすることで、見込み顧客との良好な関係を築くことで商談に持ち込めます。

9.ダッシュボードで現状を把握する

CRMシステムのダッシュボードで目標達成度や進捗度合いを把握できる状態にしておきましょう。進捗状況が一目で分かれば、ステージにあった対応がすぐに可能になります。ダッシュボードが見やすいこともCRMシステムを選ぶ1つの基準にしてみてください。

10.見込み度をスコア化して優先順位を決める

CRMシステムを活用すると、顧客の見込み度がスコアで把握できるようになります。スコアが高い顧客から優先的に営業をかければ受注が取りやすくなります。

(出典元:RINGY「11 Ways an Insurance CRM Can Help Agents & Brokers」)

保険業界のCRMシステムを活用した成功事例

最後に保険業界でCRMシステムを活用して、成果が見込めている成功事例をご紹介します。

CRM戦略で顧客との関係を育成(損害保険ジャパン)

損害保険ジャパンは、保険商品を提供するだけでなく日頃から顧客と接点を持ちたいという理由で「SOMPO Park」を立ち上げました。SOMPO Parkでは「ゲーム」「クイズ」「キャンペーン」など楽しめるコンテンツが用意されており、約2,000万人の会員が登録しています。

この会員に対してメール配信などを行い、開封率やサイト訪問回数などをCRMシステムとMAツールを連携して管理しています。スコアリングが高い顧客に対して保険の見直しなどを提案するなどの戦略を立てて、顧客関係の育成に成功しているのです。

(参考資料:WEBCAS「会員サイトのメルマガ配信やアンケートに活用。メールサーバーはエイジア(現WOW WORLD)クラウド、個人情報は自社管理クラウドの“ハイブリッド構成”を実現」)

顧客情報一元化で業務効率化を実現(保険マンモス)

保険会社マンモスは紙ベースやExcelで顧客管理をしていましたが、事業拡大に対応できるようにCRMシステムを導入しました。検索窓を使用すれば、瞬時に求めている顧客情報が取り出せて業務効率化が実現できます。また、権限付与やIPアクセス制限などで、セキュリティ面の強化ができました。顧客情報の検索時間が速くなり、その分を営業時間に充てられるようになり更なる引き合いが増えました。

(参考資料:SynergyMarketing「事例:保険マンモス」)

スマートデバイス活用で生産性アップ(楽天損害保険)

楽天損害保険は、CRMシステムをスマートデバイスで活用しています。営業担当者が1日20件もの対応をするため、営業現場の使いやすさが重視されました。お客様と話しながら情報入力ができることで、資料作成業務が削減でき、生産性向上が実現できました。プログラミング知識がなくても、システムの仕様が変更できるCRMシステムを選ぶことで、事業が拡大する局面でもシームレスに対応できるようになっています。

(参考資料:SOFTVRAIN「楽天損害保険株式会社が CRM/SFA「eセールスマネージャーRemix Cloud」を導入」)

まとめ

保険業界は新規契約が難しくなってきているため、生き残りをかけて営業手法を変えていかなければいけません。CRMシステムを導入して、顧客1人1人が求めている情報を把握して提供したり、顧客が求めている商品やサービスを提案しなければいけません。

また、電話やメールだけではなく、SNSやLINE、アプリなど顧客接点のチャネルが増えてきました。このような、営業手法の多様化、複雑化が目立ってきているため、ぜひ、これを機会にCRMシステムの導入を検討してみてください。