近年、BtoB企業のマーケティングの在り方が見直されており、アカウント・ベースド・マーケティング(ABM:Account Based Marketing)や、インバウンドマーケティング(Inbound Marketing)などが着目されています。
特に米国では、この流れが急速に進んでおり、マーケティング関連ツールやソフトウェアをクラウド型で提供するスタートアップも多く出てきています。
なかでも特に注目されているのは、MarketoとHubSpotですが、今回はHubSpotについて、同社の共同創業者兼CTOであるDharmesh Shah氏の記事を紹介しながらご説明します。
HubSpotとは
HubSpotは、2006年にBrian Halligan (下記写真右)とDharmesh Shah(同左)が、「CMやテレアポのような、旧来のPush型(Outbound)のマーケティング手法は既に機能しなくなっている。今後はSEO、ブログやSNSのようなPull型(Inbound)のマーケティングが重要になる。」という考えのもと、創業したスタートアップです。
HubSpot社HPより
HubSpotは現在、インバウンドマーケティング関連で、以下3つのサービスを提供しています。
HubSpot MARKETING:
企業のホームページやブログ、SNSアカウントのマーケティングファネルを一元管理。
HubSpot SALES :
顧客の個人情報や過去のメールでのやり取りを自動で見える化、適切なタイミングでe-mailを配信。
HubSpot CRM:
顧客のコンタクトリスト管理や、見込み客へのコンタクト時期と方法のレコメンド、営業チームの進捗モニタリング。
HubSpotは、Salesforce.comやZenDeskと並びBtoBビジネスの優良企業として認知されており、2014年にNYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場し、2018年4月現在の時価総額は約4,500億円に達しています。
これまで、世界90ヵ国/数万社以上の導入実績があり、日本では2016年の参入以降、知名度が急速に高まっています。
このHubSpotの成長の秘訣について、共同創業者兼CTOであるDharmesh Shah氏は、「HubSpotはSoftwareではなく、顧客の成功を売る”Success as a Service”を徹底してきたことにある。顧客の成功体験を売ることが重要だ。 」と語っています。
まさに、「【営業力を上げる】営業の本質とは?営業力を上げる為には?」でご説明した「顧客の時間的/経済的価値の最大化」を徹底した結果、急成長を遂げたということになります。
今回は、同社が「顧客の時間的/経済的価値の最大化」を実現するために何をしてきたのかについて、ご説明します。
HubSpot流 “Success as a Service”への取組み
先ず、「顧客の時間的/経済的価値の最大化」(=Success as a Service)を実現するために、HubSpotは顧客に向けて“気付き”、“まなび”、“繋がり”という3つの価値を提供しています。
- 【気付き】自社のマーケティングが機能しているか、”気付き”を与える
- 【まなび】マーケ担当者がインバウンドマーケティングについて”学ぶ機会“を提供する
- 【繋がり】マーケ担当者同士が”つながる”コミュニティを作る
実は、顧客に価値提供すると同時に、HubSpotは優良見込み顧客を自動的かつ継続的に産み出すインバウンドマーケティングチャネルを確保しており、これが同社の成長エンジンになっています。
今回は、「価値提供をすると同時に優良見込み顧客を確保するための取り組みを具体的に紹介いたします。
1.【気付き】Website Grader/Twitter Grader
HubSpotは、ホームページやTwitterアカウントの無料診断ツールを提供しています。
自社のSNSやオウンドメディアがどれだけ機能しているか、手軽にチェックする方法が無かった為、ほとんどの企業が効果測定をしていませんでした。そこでHubSpotは、無料診断ツールを提供することで、顧客にインバウンドマーケティングの必要性への“気付き”を与えていました。
一方、HubSpotにとっては、事前に見込み客のSNS/メディアの活用状況を把握できるので、営業工数削減に寄与しつつ、優良見込み顧客を確保できるようになりました。
2.1【まなび】HubSpot’s Blog
HubSpot’s Blogはマーケティングトピック別に5,000以上の記事がまとめられており、40万人以上の定期購読者を有し、月間4.5百万人が訪れているオウンドメディア(ブログ)です。このブログは、マーケター向けに具体的なハウツーがまとめられており“まなび”を提供しています。
また、マーケターから他のマーケターに記事がシェアされることで、芋づる式に購読者が増え、HubSpotのリード総数の20%を占めるほど、有力なメディアになっています。
2.2【まなび】HubSpot Academy
ブログに加えて、より充実した“まなび”を提供するために、マーケター向けにe-learningコースを提供しています。「企業ブログの書き方」や「CRMのアップデート方法」など、実務的なハウツーを無料で学ぶことができます。
HubSpotユーザー以外にも、見込み客や学生も無料で受講することができ、HubSpotがマーケターの成功を強力にサポートする企業だというイメージを作ることで、HubSpotへのロイヤルティを高める取り組みです。
3【繋がり】Inbound.org
HubSpotはマーケター専用のソーシャルメディアを提供しており、2018年4月現在までに17万人以上のマーケターが登録しています。記事コンテンツをシェアしたり、その記事を元にマーケティングトピックについて議論したり、求人や応募もできるプラットフォームになっています。
この“繋がり”を提供することにより、ブログやe-learningには載っていないトピックについて他のマーケターと意見交換したり、マーケターのキャリア形成のツールとしても役立っています。
以上、HubSpotの「顧客の時間的/経済的価値の最大化」(=Success as a Service)を実現する取り組みについてご説明させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?
様々なサービス/プロダクトが溢れ、かつ顧客のニーズも細分化している現代、他社との差別化が難しくなっています。これからの時代は、いかに「顧客の時間的/経済的価値の最大化」するかが成長のカギになってくるのでしょうか?
どうしたら、「顧客の時間的/経済的価値の最大化」できるのかは、E-book:「【営業力を上げる】営業の本質とは?営業力を上げる為には?)」や、ブログ記事:「【営業力を上げる】営業の本質とは?営業力を上げる為には?」にまとめてありますので、あわせてご覧下さい。