NTTが提供していたINSサービス「INSネットディジタル通信モード」(※)を契約していれば、電話やFAX、通信機器が利用できる便利な回線が利用できると評判でした。しかし、INSサービスは利用者の減少や通信設備の老朽化によりメンテナンスが難しくなったため、2024年1月に終了することが決まりました。
音声通話でだけ固定回線を利用しているユーザーは、音声通話サービスは変わりなく利用できますが、業務にISDN回線をデータ伝送回線として利用している場合には、2024年1月以降使えなくなります。
そのため、INSサービスを契約している方はサービス終了の影響を受けないように対策をしてください。この記事では企業が受ける影響と対策方法をご紹介します。
(※ISDNサービスとINSサービスの意味は同じです。ISDNサービスは国際規格の名称で、INSサービスをNTTが提供しているISDNサービスの名称となります。INSサービスには、「通話モード」と「ディジタル通信モード」があり、「INSネットディジタル通信モード」が、2024年1月でサービス終了になります。)
目次
ISDNサービスとは
引用:『NTT東日本 (別紙)加入電話・ISDN契約数の推移』
NTTが提供しているINSサービスに、標準で搭載されているデータ伝送に特化した通信モードをいいます。専用端末によるセンターとエンド間の通信で利用されていました。具体的な例を説明すると、企業本部と店舗間のPOS端末通信などに使われている通信モードです。
NTTが提供しているサービス「INSサービス」は、デジタル通信網のISDN回線を1つ契約すれば「電話」「デジタル通信」の2つが利用できます。
NTT東日本「加入電話・ISDN契約数の推移」だと、2020年度末における電話契約+ISDN契約は794万となりました。未だに多くの企業が利用している状況ですが、2000年度末は3,147万件が電話契約+ISDN契約をしていたため、2,353万件減っています。つまり、NTTが提供しているINSサービスの利用者数は減ってきているのです。
2024年1月にISDNサービスは終了
INSサービスに利用されている通信設備は老朽化しており、2025年頃にはメンテナンスができなくなります。そのため、ISDN回線ではなく、IP回線が使えるものに切り替える作業が進められることになりました。この切り替え工事により、電話のアナログ回線はIP回線に切り替わります。そのため、NTT側の切り替え工事が終了すれば、固定電話をIP電話として利用できるようになるのです。
しかし、ディジタル通信モードは、切り替え工事後に利用できなくなるため気をつけてください。NTTは補完策として、2027年までINSサービスを利用したデータ通信が継続できるようにしています。しかし、これは補完策であり、従来の通信サービスと同品質とはなりません。そのため、2024年にISDNサービスが終了となることを踏まえて、対策を考えていかなければいけないのです。
参考:『NTT西日本 「INSネット」をご利用の事業者さまへ』
ISDNサービス終了で影響が出るシステム
引用:『NTT東日本 (別紙)加入電話・ISDN契約数の推移』
INSネットサービス終了で影響が出る主なシステムは以下の通りです。該当するシステムを利用している方は、サービス終了前に他サービスに移行するなど対策を考えましょう。
通信機器 | 利用例 |
金融機関のEB・FB | 専用ソフトをインストールしたPCを利用して金融機関に接続し、残高や入出金の照会や資金移動を行っている |
EDI(電子商取引) | PCを利用して、「メーカー」「卸」「小売り」の商品受発注をしている |
CCT(信用照会端末) | お客様のクレジットカードでのお支払い時に、カードの信用照会している |
レセプトオンライン請求 | 保険診療の診療報酬等、オンラインで審査支払機関や健康保険事業者に請求している |
G4規格FAX | 事業所で高精細な複合機やFAXを提供している
店舗に複合機を設置してFAXサービスをお客様に提供している |
事業者の拠点間ネットワーク | 本社と支社間通信のバックアップを取得している |
参考:『NTT西日本 「INSネット」をご利用の事業者さまへ』
ISDNサービス終了の前に取り組むべきこと
ISDNサービスが終了すると、通信機器が利用できなくなり、業務に支障が出てしまいます。そのため、ISDNサービス終了となる2024年1月までに、代替案を考えていかなければいけません。そのため、ISDNサービス終了前までに取り組むべきことを押さえておきましょう。
- ISDNサービスを利用しているか確認する
- サービスを切り替える手配をする
- サービスを切り替えて支障がないかテストする
ここでは、各手順について詳しく解説します。
1.ISDNサービスを利用しているか確認する
組織変更や担当者変更で、ISDNサービスを利用しているにも関わらず、気づかない方が多くいます。そのため、以下の2つの方法でISDNサービスを利用しているか確認してください。
1.INSサービスを利用しているか請求書を確認する
出典元:『NTT西日本 「INSネット」をご利用の事業者さまへ』
NTT以外の通信会社を経由して利用している場合は、INSネット(ISDNサービス)を利用していても、INS通信料と表記されないケースがあるため注意してください。請求書のINS通信料の表記だけでなく、ターミナルアダプターやディジタルサービスユニットの接続状況を確認しましょう。
2.INSサービスの通信機器を使用しているかを確認する
出典元:『NTT西日本 「INSネット」をご利用の事業者さまへ』
INSサービスの通信機器には「TA(ターミナルアダプタ)」と「DSU(ディジタルサービスユニット)」があります。これらの通信機器を使用しているかを確認してください。INSサービスのディジタル通信モードを利用しているかの確認方法に関しては、NTTの動画を参考にしてみてください。動画は「コチラ」から閲覧できます。
2.ISDNサービスを切り替える手配をする
ISDNサービスを契約している方は、新たなサービスに切り替える手配をしましょう。基本的には「ひかり電話へ移行する」「非固定電話への移行する」の2種類の対応策があります。
ひかり電話へ移行する
出典元:『NTT西日本 「INSネット」をご利用の事業者さまへ』
INSサービスから、フレッツ光ネクストへ移行すれば、電話やFAXの電話番号を変えずに移行できます。また、基本料金を削減できることです。フレッツ光ネクストを契約して、電話を使う場合の基本料金は500円です。従来のINSサービスと比較すると、1拠点当たり基本料金が3,030円安くなります。
しかし、回線工事が必要になり、高い費用を支払わなければいけません。回線工事費用は業者によって異なりますが、約8万円です。そのため、3年以上利用すれば、削減効果が享受できることになります。
ひかり電話へ移行する場合は、フレッツ光ネクストの無料のオプションサービスIPv6を利用すると、通信速度が上げられるためおすすめです。
非固定電話への移行する
固定電話から非固定電話(コミュニケーションサービス)へ移行すれば、ISDN回線の料金を支払わずに済みます。また、電話やFAX以外のビデオ会議やチャットなどのサービスが利用できるようになります。
しかし、電話機としてLANに接続できるIP電話機が必要です。この問題を解決する方法として、スマートフォンに、コミュニケーションサービスのアプリケーションをインストールする方法があります。非固定電話へ移行する場合は、どこのサービスを利用すべきか吟味する必要があります。
参考:『@IT ISDNの終わり方に「3択」あり、あなたはどれを選ぶ?』
補足:切り替えない選択はおすすめできない
INSサービスが終了となっても、NTTは切り替え工事の猶予期間として、2027年まで補完策を用意しています。そのため、電話回線サービスや電話機の切り替えをしなくても、通信機器は利用できます。しかし、従来のINSと同等の品質のサービスが受けられるわけではありません。
あくまでも補完策のため、従来のデータ通信速度を期待していると、業務に支障が出てしまうでしょう。そのため、光電話へ移行するか、非固定電話へ移行するかで考えることをおすすめします。
参考:『NTT西日本 「INSネット」をご利用の事業者さまへ』
3.サービスを切り替えて支障がないかテストする
ISDNサービス終了に伴い、ひかり電話や非固定電話に切り替える場合は、テスト期間を設けましょう。ISDNサービス終了間際に切り替えを慌ただしく行うと、利用者が混乱してしまい業務に支障が出てしまいます。そのため、サービスを切り替えるスケジュール計画を立てて、落ち着いて対応するようにしてください。
一定のテスト期間を設けておけば、ベンダー側も手厚くサポートしてくれるはずです。
参考:『@IT ISDNの終わり方に「3択」あり、あなたはどれを選ぶ?』
まとめ
NTTのINSサービスは、1つの回線契約で「電話」「FAX」「データ通信」ができるため人気がありました。しかし、データの高速通信や通話料の安いIP電話の登場により、NTTのINSサービスの契約件数は減少してしまったのです。さらに、通信設備の老朽化でメンテナンスコストがかかり維持ができなくなったため、サービス終了が決まりました。
NTTが無償で提供する切り替え工事後は、電話は従来通り使用できます。しかし、ディジタル通信モード(ISDNサービス)を利用して通信していたシステムは使用できなくなります。そのため、ISDNを利用している方は、これを機会に、ひかり電話か非固定電話に切り替えを検討してみてください。