2020年11月に実施されたパーソル総合研究所「テレワーク実施率の調査結果」によると、全国のリモートワーク実施率は24.7%となっています。
5月に実施された同調査と今回の調査を比較すると、「会社がテレワークに消極的で実施しにくい」と回答した人が2.3ポイントも増加しています。企業がリモートワークに消極的になる理由として、従業員のモチベーション維持が難しいという課題が挙げられています。
一方で、2015年度に85%以上の企業がリモートワーク導入している米国では、リモートワークを有効活用して生産性向上に成功しています。この記事では、リモートワークでモチベーションを維持するための方法について解説します。
リモートワークのモチベーション維持の課題
株式会社KTBコミュニケーションデザイン「リモートワークの実態調査」によると、リモートワークにおけるモチベーションに関する課題として、「コミュニケーション不足や孤立を感じる(42.1%)」「仕事に対するモチベーションを維持しにくい(34.8%)」「正当に評価されているか不安がある(18.9%)が挙げられています。まずは、それぞれの課題について分かりやすく解説します。
コミュニケーション不足や孤立を感じる
リモートワークで在宅勤務になれば、上司や同僚と対面で会う機会は減り、メールやチャットなどのコミュニケーションツールが主流となります。コミュニケーションツールでは、相手の表情が読み取れないため、相談しにくくなります。
また、相手の状況が分からないので、気軽に声がかけられません。そのため、コミュニケーションが不足して孤立を感じる従業員も出てきてしまうのです。
プライベートと仕事の切り替えが難しい
リモートワークは、オンオフの切り替えが難しくなります。オフィスに出向く必要がなくなるため、気持ちにスイッチを入れることが難しいです。不規則な生活スタイルが定着したり、仕事とプライベートの境目が曖昧になったりなど弊害が生じてしまいます。
また、リモートワークに必要な作業スペースが整えられず、作業に集中できないなどの問題もあります。時間の区切りがつきにくく、つい残業してしまう従業員も珍しくありません。このような弊害があるため、仕事に対するモチベーション維持が難しくなります。
正当に評価されているか不安がある
リモートワークでは、仕事に取り組む姿勢を見てもらうことができません。時間をかけて取り組んでも、成果が出なかった場合は、サボっていると思われるのではないかと不安に感じる従業員もいます。また、何を基準に評価されるか分からずに不安だと悩む従業員も多いです。
(参考文献:株式会社JTBコミュニケーションデザイン「【2020年最新調査公表】「リモートワークの実態調査」から、モチベーション維持のポイントを探る」)
従業員のモチベーションを高める7つの動機
リモート営業で従業員のモチベーション維持が難しいと悩む企業が多いですが、そもそもモチベーションが高まる動機とは何なのでしょうか?モチベーションの維持に取り組む前に、従業員のモチベーションを左右する動機について理解を深めておきましょう。ここでは、従業員のモチベーションを高める7つの動機をご紹介します。
外因的動機 | ステータス | 仕事に取り組む姿勢や成果に対する評価 |
人間関係 | 熱心に指導してくれる上司、相談し合える仲間 | |
権限 | 自分の判断で仕事ができる権利 | |
報酬 | 業績や成果に見合った報酬 | |
内因的動機 | 自主性 | 自分で考えながら取り組める喜び |
成長 | 自己成長によって目標達成できた喜び | |
目的 | 社会やチームへの貢献できた喜び |
(参考資料:asanify「15 Awesome Ways To Boost Remote Employees Motivation」)
リモートワークでモチベーション維持する方法

リモートワークでモチベーション維持に悩む企業は多いですが、米国企業の取り組み方を学べば、課題は解決できるはずです。ここでは、米国企業が実践するリモートワーク営業でモチベーション維持する方法をご紹介します。
1.目標を共有する
事業目標はリモート従業員にも共有しましょう。目標共有することで、企業に所属していることを自覚させられます。また、各自の目標を設定させて、自主的に取り組んでもらえる環境を与えましょう。しかし、各自の目標は努力すれば成し遂げられる目標を設定することが大切です。
(参考資料:TWEAK YOUR BIZ「How to Motivate Your Team During Remote Work」)
2.定期的に結果を報告する
リモートワークでは、働いている姿が伝わらないため、正当な評価をされるか不安に感じる従業員もいます。そのため、目標共有だけではなく結果報告も行いましょう。この結果報告は、定期的に行うほど効果的です。先進国の企業では、毎週金曜日に、オンライン会議で結果を報告するなど、努力を称える場を設けるケースが多いようです。
(参考資料:How to keep everyone motivated when working remotely)
3.視覚的なスコアボードを作成する
従業員は、自主性と有能感が感じられるとモチベーションが上がります。そのため、目標と進捗状況が視覚的に分かるスコアボードを作成しましょう。
目標を明確に提示して、進捗状況を示すことで自主的に仕事に取り組んでもらえます。また、視覚的なスコアボードを活用して人事評価することで、正当な評価が受けられると安心感を与えることができます。
(参考資料:Calendar「12 Tips for Motivating Your Remote Team」)
4.定期的に顔を合わせる
リモート従業員に対して、テキストメッセージや音声通話で指示を出すだけでは不十分です。定期的にビデオ通話を活用して顔を合わせる場を設けましょう。ミシガン大学の実験で、顔を合わせて作業するチームと各自で作業するチームを比較したところ、顔を合わせて作業するチームの方が、業績が上がりました。
顔を合わせることで相手の雰囲気が分かり、やり取りにおける緊張やストレスを減り、スムーズに仕事が進められることが実験で証明されています。
(参考資料:HUFFPOST「まず顔を合わせてお互いを知る。~リモートワーク時代のチーム術~」)
5.従業員に対して信頼していることを示す
日本では「勤怠管理」「在席確認」「アクセス監視」「アプリ監視」「キーロガー監視」などでリモートワーク監視をする企業も増えているようですが、従業員のエンゲージメント向上に逆効果です。また、リモートワークで働き過ぎる従業員も問題となっていますが、これらは、従業員への信頼を示すことで解決できます。
信頼を示すことで、従業員は時間内に必要なタスクを完了することに十分な能力を発揮します。また、信頼してくれる企業に貢献したいと意欲的に仕事に取り組んでもらえるようになるのです。
(参考資料:LASSIC「テレワーク・在宅勤務で「監視ツール」を社員が歓迎!?」)
6.定期的なフィードバックを大切にする
リモートワーク営業は、コミュニケーション不足になりがちで、孤独を感じやすいです。また、相手の状況が見えないために相談しづらいです。お互いの姿が見えないため、正当な評価が受けられるのか不安を抱く従業員も少なくありません。
このような従業員の不安を解消するために、定期的なフィードバックをしましょう。また、一方的な指示を出すだけではなく、各従業員に要求にも耳を傾けることが大切です。
7.新しいことに挑戦させる
モチベーションを維持するためには、従業員の自律性や有能感を満たすことが大切です。とくに、有能な人材は、仕事に取り組む際に目標を持って取り組んでいます。そのため、成長する機会を積極的に提供して、自己革新と有能感を与えましょう。
(参考資料:asanify「15 Awesome Ways To Boost Remote Employees Motivation」)
8.オンラインイベントを主催する
いつでも会話が楽しめるバーチャルオフィスを設けることも大切です。気軽に相談しやすい関係が生まれます。それだけではなく、定期的にオンラインイベントを開催しましょう。チーム全員が参加するオンラインイベントを開催することで、チームの団結力を高められます。従業員に対して、組織の一員であると自覚を持たせる機会にもなります。
(参考資料:TWEAK YOUR BIZ「How to Motivate Your Team During Remote Work」)
9.成果に対する報酬を設定する
国内でも、リモートワーク普及と同時に「ジョブ型人事制度」が採用されはじめ、仕事の価値に応じて報酬が支払われるようになってきています。目標到達に応じて報酬額を設定して、スキルや勤続年数などは反映されません。そのため、リモートワークで正当な評価が受けられるかという不安が払拭できます。
また、目標到達すれば報酬が受け取れるため、お金を稼ぎたい従業員のモチベーションを高めることもできます。
(参考資料:CANTERA「ジョブ型人事制度 報酬制度の3つの特性とベンチマークポリシーの重要性」)
10.学習環境を整備する
従業員に秘められた可能性を信頼して、スキルアップできる学習環境を整備しましょう。各従業員が新たなスキルを習得するほど、優秀なチームが維持できます。
リモートワークで業績を上げている企業では、学習環境としてセルフトレーニングの場を提供。主に「Udemy」「Sliishare」「LinkedlnLearnig」などのオンライン学習プラットフォームが導入されています。
(参考資料:Calendar「12 Tips for Motivating Your Remote Team」)
11.デジタルツール・作業環境を整備する
リモートワークを依頼する場合は、デジタルツールを整備して働ける環境を整えてましょう。必要に応じてデスクやパソコン機器も揃えましょう。従業員の働きやすさを意識して、環境を整えることで仕事の能率が上げられます。
環境整備がされていないと、ソファーやベッドに引き寄せられることが良く起こります。そのため、従業員の作業スペースを用意しましょう。
(参考資料:asanify「15 Awesome Ways To Boost Remote Employees Motivation」)
コロナ禍リモートワーク営業のモチベーション維持方法
コロナ禍でリモート従業員に配慮する姿勢を見せる企業に注目が浴びています。実際に、どのような配慮がされているのでしょうか?ここでは、コロナ禍のリモートワーク営業のモチベーション維持方法を紹介します。
1. 従業員向け生命保険に加入する
新型コロナウイルス感染拡大など慣れない環境で、疲弊する人が増えています。精神科医はコロナ禍でうつ病になる可能性がある人は5割を超えたと述べているのです。
健康保険や雇用保険だけではなく、生命保険で従業員の健康をカバーする企業が注目を浴びています。中には、従業員だけではなく、リモートワークに協力してくれている家族にも保険をかけて配慮を示す企業が増えてきています。
2.マスクや消毒剤の支給をする
新型コロナウイルス感染拡大によって、従業員に対して、定期的にマスクや消毒剤を送付する企業も増えています。従業員や家族に配慮できるだけではなく、集団感染リスクを抑える効果も期待できます。
3.サブスクリプションを提供する
新型コロナウイルス感染拡大の影響でリモートワークになった従業員もいます。リモートワークは、一緒に住む家族の協力を得なくては行えません。日頃の従業員の努力を称え、リモートワークに協力してくれる家族に感謝をするために、オンラインストリーミングサービス(Netflix.Amazon Prime)を福利厚生として提供する企業も増えています。
(参考資料:asanify「15 Awesome Ways To Boost Remote Employees Motivation」)
まとめ
新型コロナウイルス感染拡大防止で、リモートワーク導入が推奨されていますが、従業員のモチベーション維持が難しいと懸念する企業も多いです。しかし、米国では、従業員のモチベーション維持をしつつ、リモート営業を行って生産性を上げているのです。
【リモートワーク営業でモチベーションを維持する方法】
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目標を共有する
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定期的に結果を報告する
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視覚的なスコアボードを作成する
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定期的に顔を合わせる
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従業員に対して信頼していることを示す
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定期的なフィードバックを大切にする
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新しいことに挑戦させる
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オンラインイベントを主催する
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成果に対する報酬を設定する
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学習環境を整備する
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デジタルツール・作業環境を整備する
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新たな福利厚生を考える
ぜひ、本記事を参考にリモートワーク導入時に上記の施策を取り入れてみてください。