〜IP電話・PBX・IVR・ACD・CTI・CRM〜 電話システムの基本用語を分かりやすく解説

総務省「平成30年版情報通信白書」によると、IP電話の加入契約者数は堅調に伸びています。実際に、通話料が安く抑えられるだけではなく、業務効率化も同時に図れます。

また、IP電話の導入と共にシステム連携を行えば、通話料金の削減だけではなく、完全にフルリモートのセールスチーム構築が実現できます。この記事では、IP電話で業務効率化を実現するために覚えておきたい基礎知識をご紹介します。

IP電話で業務効率化を図るために必要な基礎知識

VoIP communication concept. 3D rendering isolated on white background

IP電話は堅調に普及していますが、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?まずは、基本知識について学びましょう。

IP電話とは

 IP電話は、簡単に、一言で言えばインターネット回線を利用した電話です。音声データをデジタル化して相手の元に届けて復元することで、固定電話と同品質の通話を実現しています。電話機の代わりに利用されるVoIPゲートウェイと呼ばれる装置が音声データを作っています。このような仕組みでIP電話が利用できるのです。

IP電話のメリット

(1)   固定電話より通話料が安い

IP電話は固定電話より通話料が安く抑えられます。IP電話を使用するためにはインターネット環境が必要になりますが、県外の通話を3分間かけた場合で比較すると、IP電話は8円程度で固定電話は21円程度。IP電話の通話料が安いのは一目瞭然です。また、基本料金も安く設定されています。

(2)   同じプロバイダーでの通話が無料

近年では、クラウドPBXも登場してきており、インターネット環境が整えられた場所であれば、場所を問わずにPBXに簡単に接続できるようになりました。例えば、海外拠点に接続すれば、海外拠点との通話も無料になります。

(3)  電話機の購入が不要

IP電話はインターネット接続が可能なPCやスマホを電話機として使用できます。電話機の購入が不要です。

IP電話のデメリット

インターネットの普及や高速化により、IP電話のデメリットは少なくなってきています。懸念しなければいけないことは、フリーダイヤルを使用できないことです。また、110番などへの緊急通報ができません。

固定電話とインターネット電話と比較

比較項目 固定電話 IP電話 インターネット電話
利用形態 電話機 電話機・パソコン・スマートフォン パソコン・スマートフォン
中維網 公衆回線 IP回線 インターネット回線
中維網伝送タイプ 帯域保証型 帯域保証型 ベストエフォート型 (回線業者が提示した最大通信速度が上限)
料金体系 従量制 定額制 定額制
サービス品質 高品質 高品質 ベストエフォート型(回線業者によりサービス品質は変動する)

参照:日本総研「IP電話とは何か」

 

PBXとは

PBX(Private Branch eXchange)は、電話回線の交換機のことをいいます。企業内で複数の電話機を使用する場合に設置され、施設内の電話機同士で内線通話を行えるようにしたり、外線通話に接続したりする役割を担っています。

ビジネスフォンも同じ役割を持っていますが、オフィス内のパソコンと接続できたり、スマートフォンをコードレス電話機の様に使用できるなどの効果が得られるため、PBXを設置する企業が増えています。

PBXの主要機能

発着信制御機能 外線からの着信を電話番号毎に鳴り分ける機能。1つの電話回線で複数の電話番号が利用できるため、複数の部署がある場合などに重宝される。
内線同士の通話機能 PBXに接続中の電話機同士で内線ができる機能。同一回線の通話になるため、通話料金は発生しない。
ダイヤルイン機能 電話番号を追加することができる。また、電話番号毎に着信させる電話機を指定することも可能。
代表番号着信機能 登録グループの電話機に代表番号宛ての電話を繋ぐ機能。
転送機能 外出中や就業時間後の電話を転送させる機能。
パーク保留機能 通話を保留にできる機能。通常の保留は特定の電話機でしか対応できないが、パーク保留は事務所内のどの電話からも対応できる。

PBXのメリット

PBXには、IP-PBXとクラウドPBXがあります。それぞれのメリットについて理解をしておきましょう。

・IP-PBX

IP-PBXは、企業内の指定された場所に設置される交換機です。企業内に配線されたLANケーブルを介して通話ができます。アナログ回線やISDN回線を必要とせず、電話機やパソコンにIPアドレスを割り当てることによって、通話回線を構築することができます。パソコンにIPアドレスが割り当てられるため、CTIなどのシステムと連携して使用することができます。

・クラウドPBX

クラウドPBXは、オフィス内に設置せずにクラウド上に設置する装置です。基本的な機能はIP-PBXと相違はありませんが、クラウドサービスのため、PBXの設置場所を必要としません。事業拡大などで他拠点を作る場合でも、サービス追加するだけで対応が可能です。海外拠点からもクラウドに繋ぐことができるため、海外拠点とも無料で通話ができます。

参照:ビジフォン.com「PBXとは?ビジネスフォンとの違いを徹底解説!」

 

IP電話で業務効率化を実現するためのシステム

IP電話とPBXを、その他のシステムと連携することで業務効率化が実現できます。実際に、どのようなシステムがあるのでしょうか?ここでは、業務効率化が見込める各種システム「IVR」「ACD」「CTI」「CRM」について解説します。

IVRとは

IVR(Interactive Voice Response)とは、コンピューターによる音声自動応答システムのことをいいます。顧客の入電理由に応じた電話番号入力で適切なオペレーターに振り分けることができるシステムです。

IVRの機能

IVRの機能には音声自動応答機があります。「〇〇に関するお問い合わせは〇番を押してください」というような音声は、IVRシステムの機能です。顧客が入電理由を番号入力しておくことで、適切なオペレーターに繋ぐことができ、一次解決率の向上が期待できます。

IVRを導入するメリット

・24時間365日対応が可能

IVRの自動音声を流せば、24時間365日対応を実現することができます。例えば、営業時間外のお問い合わせに対して、WEB申込みを促したり、緊急時の連絡先を流したりすることができます。

・応答率の向上

IVRを導入しておけば、受電前に顧客の要件が分かります。顧客の要件を事前に知ることができれば、応答率は上がります。応答率を上げることができれば、顧客満足度も上げることができます。

・一次解決率の向上

受電前に顧客の要件が分かり、業務効率化が実現できることがIVRのメリットです。一次解決率が上がれば、受電件数が増加しても、オペレーターを増やさずに対応できるようになります。

参照:BELSYSTEM24「CALL CENTER PROJECT PLANNING」

ACDとは

ACD(Automatic Call Distributor)は、着信を組織内の特定の端末またはオペレータグループに分配するシステムのことをいいます。コンタクトセンターの状況に合わせて、着信電話を自動的に割り振ってくれるため、コンタクトセンターに欠かすことができないシステムです。

ACDの機能

ACDの主な機能として、待ち呼ガイダンス、あふれ呼設定、待ち時間順着信、着信回数優先着信、スキルベースルーティング、ランダムルーティングがあります。

待ち呼ガイダンス機能 電話が混雑中にアナウンスを流す機能。アナウンスの内容は変更が可能で、Web手続きの案内をするなど、必要に応じた柔軟な設定ができる。
あふれ呼設定機能 電話が混雑中に待ち呼以外で対応するための機能。「電話が大変込み合っているため、かけ直してください。」と切電する挙動は、あふれ呼設定によるもの。
待ち時間順の着信機能 着信電話に対応せず待機時間が長くなっているオペレーターに対して入電が届くように設定ができる。
着信回数優先の着信機能 着信回数が少ないオペレーターに対して入電が届くように設定できる。
スキルベースルーティング機能 オペレーターのスキルに応じて顧客を割り振ることができる。
ランダムルーティング機能 割り振り条件を決めずに、ランダムで着信が入る。

ACDを導入するメリット

(1)オペレーターの不満を解消できる

コールセンターで各オペレーターの対応件数に差がある場合は、多くの件数を対応しているオペレーターの不満につながります。1人のオペレーターに負担がかかると、離職の原因となる恐れがあります。しかし、ACDを導入すれば着信を適切に割り振ることができ、オペレーターの入電数を均等化することが可能です。このような仕組みによって、オペレーターの不満を解消することができます。

(2)応答時間の短縮

スキルベースルーティング機能を活用することで、顧客に最適なオペレーターに繋ぐことができます。スキルの高いオペレーターに電話を繋げば、お客様の課題解決にかかる時間を短縮できます。このように、応答時間を短縮できれば、顧客満足度も上げられるでしょう。

(3)契約率が上がる

スキルベースルーティング機能で、顧客に最適なオペレーターに繋ぐことができれば、的確な対応ができます。二次対応に繋ぐ必要はありません。顧客が求めている対応が行えるため、自然と契約率が上がります。

(4)新人研修に活用できる

新人のオペレーターに難易度が高い対応は行えません。しかし、ACDを活用すれば、レベルに応じた着信を振り分けることができます。難易度の低いお問い合わせから対応するなど新人研修にも活かせます。

(参照:NECネッツエスアイ「ACD(着信呼均等分配)」)

CTIとは

CTI(Computer Telephony Integration)は、コンピューターと電話を統合したシステムのことをいいます。IT技術の進歩と共にネットワークを使用した音声通話が可能となりました。この音声データを使用すれば、コンピューター上のアプリケーションと連携できるため、大きな注目を浴びています。CTIと混同される仕組みに「PBX」がありますが、PBXは前掲で説明したように「電話回線の交換機」であり、CTIとは別の仕組みです。

CTIの機能

CTIの主な機能として、ポップアップ機能、CRM機能、通話録音機能があります。

ポップアップ機能 電話着信時に顧客情報を表示する機能。顧客情報を素早く取り出せるため、質の高いオペレーティングに効果を発揮する。
CRM連携 CTIとCRMを連携機能で、顧客情報の一元管理を実現。商品購入や問い合わせ履歴を活かして顧客対応することで、顧客満足度の向上が見込める。
通話録音機能 通話内容を録音する機能。聞き逃しによる折り返しの連絡が不要になるなど、トラブル予防や円滑な対応に効果を発揮する。

CTIを導入するメリット

(1)業務効率化

コンピューターと電話を統合したCTIを活用すれば、着信時に顧客情報がポップアップ表示されるため、顧客情報の入力が捗ります。また、通話録音機能を活用すれば、聞き逃しによる折り返しの連絡も不要です。このような効果が見込めるため、オペレーターの業務効率化を実現できます。

(2)人件費の削減

オペレーターは顧客情報の入力業務に大幅な時間を割いています。しかし、CTIを活用すれば入力業務を効率化できます。近頃は、音声データをAI技術でテキスト化できる機能も登場してきました。このような機能を活用して業務効率化していけば、人件費削減も実現できます。

(3)顧客満足度の向上

着信時に顧客情報がポップアップ表示され、顧客情報には購入履歴やお問い合わせ履歴が記載されているため、質の高いオペレーティングを実現できます。また、通話記録を自動録音しておくことでトラブル予防もできるので、顧客満足度を上げることができます。

(参照:営業ラボ「CTIとは?メリット・デメリット、機能や導入事例を解説」)

CRMとは

CRM(Customer Relationship Management)は、顧客管理システムのことをいいます。顧客を中心に考えてビジネス展開し、利益の最大化を目指すマネジメントに欠かすことができないシステムです。CRMとCTIを連携することで、顧客管理体制を強化できるため、IP電話システムとセットで覚えておきましょう。

CRMの機能

管理機能 顧客の氏名・年齢・電話番号・メールアドレスの基本情報や、商品購買日・購買金額・購買頻度、クレーム対応履歴を管理できる。また、入力情報を基に顧客をグループ分けすることもできる。
分析機能 顧客情報を基に多角的な分析が行う機能。PDCAサイクルを回していくことで、マーケティングの精度を高めることも可能。また、経営に関する的確な判断をする際にも役立つ。
プロモーション機能 商品購買日や購買金額などの条件で顧客を抽出できるため、ターゲットにメルマガを配信したり、優良顧客に優待券を付与するなどプロモーション活動が行える。

CRMを導入するメリット

・顧客情報が一元管理できる

CRMを導入すると、各部署で管理している顧客情報を一元管理できて部署連携が行えます。顧客情報が可視化されることで、各顧客に対するフォローアップ方法が明確に分かるようになります。

・顧客満足度向上に繋がる

CRMで顧客情報を管理していくと、購買金額や購買日などの情報も可視化できます。それらの情報を分析できるため、必要なタイミングでフォローすることが容易になります。最適なタイミングでフォローや提案をすれば、顧客満足度を高めることも可能です。

・PDCAサイクルが実行できる

営業活動やマーケティング活動にはPDCAサイクルを回すことが欠かせません。CRMに蓄積されたデータは分析することができるため、各施策の効果を検証できます。PDCAサイクルを実行していくことで、商談率や契約率を高めていけます。

IP電話を活用して業務効率化を実現する成功事例

IP電話システムを活用して、オンラインセールスチームの構築に成功している企業がランサーズ株式会社です。ランサーズはフルリモートのセールスチームを立ち上げるため、電話機だけではなくPCで発信できるシステム導入を検討することになりました。クラウドPBXを採用して各スタッフのPCを接続して実現。

ACDで受電管理をすることで、1人のスタッフにオペレーティング業務が集中しないように工夫がされています。CTのI自動録音機能を使用すれば、遠隔操作でも各スタッフの営業力の確認や指導が行えるのです。また、CRMで顧客情報を一元管理しているため、顧客情報が属人化する心配もありません。

IP電話システムを上手く活用すれば、フルリモートのセールスチームも簡単に構築することができるのです。

(参照:MiiTel「導入事例」)

まとめ

この記事では、IP電話の魅力をご紹介しました。固定電話より通話料金が安く抑えられるIP電話に切り替えるリスクは少ないです。フリーダイヤルは利用できませんが、それ以外のデメリットはありません。また、クラウドPBXを導入すれば、リモートワークの構築もできます。そのため、IP電話の導入を検討してみてください。

また、この記事ではIP電話と連携して利用すべき各種システムをご紹介しました。各種システムを最後におさらいをしておきましょう。

  • IVR…コンピューターによる音声自動応答システム
  • ACD…着信を組織内の特定の端末またはオペレータグループに分配するシステム
  • CTI…自動録音機能などが備えられているコンピューターと電話を統合したシステム
  • CRM…営業マネジメントに役立つ顧客管理システム

ぜひ、これを機会にIP電話で業務効率化を目指してください。

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