コールセンターのコスト削減の基本

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による業績悪化への対応策として、各企業においてコスト削減や効率化など事業の体質強化が求められるようになりました。

コールセンターも例外ではありません。コールセンターの運営には、地代、人件費、通話代など様々なコストがかかります。コールセンターの運営責任者であれば、自社のコールセンターが効率的に運営されているか否か気になるところです。コールセンターの効率性を見る指標の一つとして、「CPC」が広く用いられています。本記事では、「CPC」の特徴について触れつつ、他にもコールセンターのコストを下げる方法について解説します。

 CPCとは?

CPCとはCost Per Call(コスト・パー・コール)の略で、1回の電話対応にどれだけの費用がかかっているかを示す指標です。

コールセンターの運営には、地代、人件費、通話代など様々なコストがかかります。これらの費用の総額を、電話対応をした数で割ってCPCを求めます。

例えば、月間1万件の架電をしているコールセンターにおいて、月間500万円の運営コストがかかっている場合、CPCは500円です。

CPCを下げるためには、コールセンターの運営にかかる費用を削減することが重要です。次にコールセンターの運営費用を削減するための具体的な方法について述べたいと思います。

(参考:CPC計算方法

 コールセンターの運営費用を削減する方法

人件費を削減する

コールセンターの運営において、人件費は70%程度を占め、最もかかる経費であると言われています。人件費を削減するだけで、コールセンターの大半のコストを削減することができます。問い合わせ対応に人手をかけると、その分の人件費がかかります。オペレーターの時間を削減できれば、オペレーターの効率が高まり、配置人数を減らすことができます。以下は具体的な方法について述べます。

(1)サイト内のFAQを充実させる

ある程度パターン化された質問に対しては、サイト内のFAQを充実させることでオペレーターへの負担を減らすことができます。

(2)IVRを活用する

IVR(Interactive Voice Response )とは、顧客からの入電の際、あらかじめ用意された音声による案内や、顧客の入電理由に応じた番号入力でコミュニケーターへ対応の振り分けを行うシステムです。顧客が事前に選択した入電理由の番号を引き継ぐことで、オペレーターは対応が容易になり、一次解決率の向上が期待できます。

(3)コールセンター向けチャットボットを導入する

 チャットボットを活用することで、自動応答により自己解決が促されるため、オペレーターへの問い合わせ件数を削減することができます。頻度が高い質問のに対してはパターン化できるため、大幅に対応工数を削減することが可能です。また、自動回答では対応しきれなかった問い合わせ内容を有人対応で引き継ぐ場合にも、予め入力された情報をもとにスムーズに応対できるようになり、工数を削減することができます。

また、そもそも自社でコールセンターを運営するノウハウがないのであれば、自社でオペレーターを育成するのではなく、アウトソーサーに全面的に委託するという方法が、トータルコストでみると費用を削減することができるかもしれません。

参考:vol.18 :コールセンターのKPI : 稼働率について!? 〈その1〉

(参考:CALL CENTER PROJECT PLANNING

(参考 https://www.aspicjapan.org/asu/article/5036)

地代・オフィス代を削減する

次にコールセンターの運営費用として大きい割合を占める項目に「地代」「オフィス代」(全コストのうち6%程度)があります。

(1)リモート化を推進することでオフィスを縮小する

オフィス代を節約するために有効なのが、リモートワークです。セキュリティ面を強化したうえで各人の自宅で電話の受発信を行えばオフィスでなくとも業務が行えます。

リモート化においては、クラウド上にコンピュータや電話を統合するクラウドCTIやクラウドPBXというサービスを活用するとよいでしょう。それほど費用や日数をかけずに導入することができ、PCやスマートフォンから発信・着信や転送ができます。

これまでは従業員全員の出社を前提とした広さが必要でしたが、リモート化を推進することで、面積を最低限までに縮小することができ、コスト削減が可能になります。

(参考:https://solution-idw.com/column/line-service/callcenter-howto-costcut/ )

(参考:DBJ北海道におけるコールセンターの現状と課題)

(2) 助成制度があるエリアにコールセンターを作る

地域によっては雇用が生まれることを期待して、コールセンターやサテライトオフィスの設立に対して各種優遇策を講じています。

例えば、鹿児島市においては、「コールセンター、事務処理センターに対する助成制度」があり、補助要件を満たせばオフィス賃借料に対して50%の補助だけではなく、新規雇用者数に対して1人あたり50万円の補助、さらには通信回線使用料の50%が補助されます。

また、札幌市においては、「コールセンター・バックオフィス立地促進補助金」があります。補助要件を満たせば、正社員1人あたり50万円の補助を受けることができ、最大3,000万円まで補助を受けることができます。

 日本全国の市町村がさまざまな支援や補助金を出しているので、検討してみましょう。

 (参考:北海道産業振興条例に基づく企業立地の促進を図るための助成制度の概要

(参考:https://ccaj.or.jp/ccajnews/pdf/ccajnews281_282.pdf)

(参考:https://callnavi.jp/contents/japanesecallcenter/local_callcenter)

回線事業者を見直す 

架電にかかるコストも見逃せません。NTTを始め多くの回線事業者は最低通話時間を3分で設定しています。しかし、コールセンターの発信業務に関しては、全体の発信数に対し、3分以上通話をする割合は非常に少なく、多くは1回当たりの通話が数秒で終わります。 

ほんの数秒しか回線がつながっていないのに、3分基準の通話料金を支払うのはあまりに無駄が多いです。

1秒単位で通話料金を課金するサービスを利用すれば、留守番電話につながってメッセージを残さずに電話を切る場合や、ガチャ切りされた場合でも、発生する通話料金を最低限に抑えられます。

成果報酬型のコスト削減コンサルティング会社に依頼する

オフィス機器(複合機、固定・携帯電話等)施設(賃料・共益費、ビル管理)などの調達・購買コストにおいて成果報酬で削減を提案してもらえるコンサルティング会社があります。

コスト削減で得られる収益と成果報酬で払う手数料を比較したうえで依頼することを検討しても良いかもしれません。

(参考:https://www.biz.ne.jp/matome/2004858/)

CPCだけに注目するのは危険

これらの施策をすることによって、架電をはじめとしたコールセンター運営に係るコストが下がり、CPCを改善させることができるでしょう。

しかし、最初にお伝えしたように、コールセンターはCPCがすべてではありません。新人教育期間や対応内容によって処理件数が変わりますし、CPCの価格が下がったからといって、オペレーターの対応の品質が上がり、顧客満足が上がるとは限らないのです。

 むしろ、無理に削減を推し進めた結果、働く環境が悪くなったと感じて高い離職率を招く恐れもあります。また、対応品質の低下はクレームにつながります。クレームによる顧客対応が長引き対応件数が減ると、かえってCPCは悪化するので注意が必要です。

CPCは週単位や月単位ではなく、年単位の長いスパンで考え、スタッフ全員が少ないストレスで働けるように職場環境を整えなくてはいけません。

 (参考:コールセンター運営コストについて

 CPCを下げる施策を取りつつ、働きやすい職場環境を実現しましょう。

 秒課金の電話サービス導入やオフィス移転などで、架電コストをはじめとしたコールセンター運営にかかるコストを下げればCPCも下がります。しかし人件費を節約しようと過剰にスタッフの人数を減らすとオペレーターの負担は増えますし、応対品質も低下し、さらに離職率が高くなることが予想されます。

よく言われる言葉ですが、人は企業の財産です。特に相手の顔が見えないコールセンター業務では、どの通話にも、感じの良い対応をスピーディーに行うスキルが求められます。それは一朝一夕に身につくものではなく、経験によって養われる部分も多いため、オペレーターが長く働き続ける環境を作りつつ、架電コストを下げましょう。