リモート環境で取り入れるべき新人教育方法とは?

目次
新型コロナウイルス(COVID-19)への対応をきっかけに、リモートワークを導入する企業が増えました。2020年3月には緊急事態宣言が発表され、不要不急の外出自粛だけでなく、在宅勤務の推奨も強く求められたことで、企業はリモートワークへの迅速な対応が迫られました。
こうした流れを受けて、リモートワークは一過性の対策ではなく、現在では多くの企業で定着しつつあります。ただ、リモートワーク環境では、(1)業務分担、(2)指示・報告、(3)勤怠管理、(4)人事評価、(5)教育などで課題が生じがちです。
中でもリモート環境下での「教育」に関して、多くの企業がこれまでに十分な取り組み経験がなく、対応に苦慮しています。
本記事では、リモート環境でも新人を早期に戦力化するための教育方法をご紹介します。
リモート環境下の新人教育の課題とは?
リモート環境での新人教育には、多くの課題があります。特に、コミュニケーションの取りづらさや、心理的な距離感が問題となりがちです。実際に、どのような課題があるのかを以下紹介します。
コミュニケーション不足に陥る
リモートワークでは、対面で話す機会よりも、文章によるやり取りが増えます。文章だけのやり取りは、表現次第では素っ気なさを感じてしまい、相手の心情が見えません。そのため、単なる質問なのに、責められているかもしれないと誤解を招くことがあります。
また、オンライン上でのやりとりだけでは、距離感が縮まりにくいため、新入社員が質問しづらくなってしまいます。些細なことに関して質問するのは、気が引けてしまうと悩む新入社員も多いです。新入社員の心理的安全が確保されないと、ストレスを与えてしまうので注意しなければいけません。
顔と名前・仕事内容を一致させにくい
リモート環境では、顔と名前、仕事内容を一致させにくいという課題があります。対面でのやり取りがないため、新入社員は「誰に何を聞けばよいのか」が分からず、業務がスムーズに進まないことがあります。特に、メンバーが多い企業では、関係者を把握するまでに時間がかかり、新人の不安を助長する要因にもなりかねません。
また、例えば新人が社内の担当者を正しく認識できず、顧客対応に関する質問を誤った部署に問い合わせてしまったケースも起こりえます。このような事態を防ぐには、顔写真付きの社員名簿を社内ツールで共有する、初期研修で関係者の役割を説明するといった仕組みを整えることが大切です。
こうした工夫により、新入社員の適応を早め、業務の効率化にもつながります。
心理的な距離感が埋まりにくい
リモートワークでは、対面での雑談やランチの機会がないため、心理的な距離が埋まりにくくなります。特に別部署の人とは接点が少なく、関係性が築けないことで、新入社員が「些細なことを聞きづらい」と感じるケースもあります。
この状況が続くと、孤独感や帰属意識の低下につながり、組織への馴染みが遅れるリスクがあります。
例えば、リモート環境下で新入社員が「会社の文化が分からない」と悩むケースが多発してしまうことは容易に想像ができます。
新人教育に欠かせないオンボーディング

新人教育に欠かせないオンボーディングをご存知ですか?オンボーディングは、社員教育に欠かせない手法です。特に外資系企業で一般的に使われており、日本企業でも大手企業を中心に導入が進められてきています。ここでは、オンボーディングについて解説します。
オンボーディングとは?
オンボーディング(on-boarding)とは、新入社員が企業文化や業務にスムーズに適応し、早期に戦力化するための仕組みのことです。本来は「乗船」や「搭乗」を意味しますが、ビジネスにおいては、新入社員が組織の一員として定着するまでのプロセスを指します。
近年では、新卒社員だけでなく、中途採用者や幹部候補などの育成にもオンボーディングが活用されています。具体的な施策としては、入社後の研修、メンター制度、定期的な面談などが挙げられます。これにより、以下のような効果が期待できます。
目的 | 効果 |
早期戦力化 | 業務理解が進み、生産性が向上する |
企業文化の浸透 | 価値観を共有し、組織への適応を促す |
社員同士の関係構築 | コミュニケーションを円滑にする |
離職率の低下 | 不安を軽減し、定着率を向上させる |
リモート環境でも適切なオンボーディングを実施することで、新入社員が安心して働ける環境を整えることができます。
有名企業ではオンボーディングを実施
世界中に13万人以上の社員を有するオラクル・コーポレーションでは、クラウド事業を推進するために大量の人材採用を行っています。
日本法人である日本オラクル社だけでも、年間100名規模で社員採用をしています。1年間に100名規模を採用する同社では、”いかに早く会社に慣れてもらい、実力を発揮してもらうか”が課題として挙げられており、その課題を解決するために、「社員エンゲージメント室」が設けられ、社員研修プラグラムの提供など、さまざまな取り組みが行われています。
オンボーディングの手順
オンボーディングの手順の一例として、日本オラクル社の方法を紹介します。日本オラクル社では、1ヵ月間で会社や製品の基礎知識を身に付けさせて、働くメンバーとの信頼関係を構築し、早期に活躍できるプログラム作りがなされています。
[研修プログラムの内容]
1週目 | 集合研修を実施して、会社や組織のルールなど企業理念・文化・体制を学習します。この集合研修は、社内関係者とつながることを意図した構成。オラクル社の一員だという自覚を与えて、新入社員の自発的な行動を促してく役割を担います。 |
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2週目 | 業務に必要なOJTを実施します。グローバル標準のテキストを使用したり、eラーニングを活用したりして、オラクル社の営業手法を学びます。 |
3週目 | 担当製品に関する知識(機能・価格など)をOJTで学びます。 |
4週目 | 再び、集合研修を実施します。2週目・3週目で学習した内容の習熟度を確認します。 |
5週目 | 現場に出る前の準備期間です。上司と習得状況を確認し、実践に備えます。 |
(参考:SELECK「会社の印象は1ヶ月で決まる!?社員エンゲージメント85%に挑む、日本オラクルの挑戦」)
リモートで新人教育(オンボーディング)を実施する方法

リモート環境での新人教育(オンボーディング)では、対面でのサポートが難しい分、計画的な仕組みづくりが重要です。オンラインでもスムーズに適応できるよう、信頼関係の構築や業務の標準化、コミュニティの活用、感謝の伝達などの工夫が求められます。
タッチベースの会話による信頼関係の構築する
リモート環境では対面でのサポートが難しいため、計画的な仕組みづくりが欠かせません。特に重要なのは、信頼関係の構築・業務の標準化・コミュニティの活用・感謝の伝達といった工夫です。
タッチベースの会話で信頼関係を築く
リモートワークでは、些細なことを相談しづらく、新人が孤立しがちです。そこで有効なのが、短時間の「タッチベース」ミーティングを取り入れることです。
項目 | 内容 |
---|---|
目的 | 業務の進捗確認、疑問解消、心理的安全性の確保 |
頻度 | 1日1回~週3回程度 |
方法 | 5~10分のオンラインMTG、テキストチャット報告、雑談OKの時間を設ける |
例えば、1on1ミーティングを導入し、各メンバーの自己紹介を社内ドキュメントに記載することで、誰に何を相談すべきかを明確にする。さらに、毎日15分程度のショートミーティングを実施し、コミュニケーション不足を解消するなど、タッチベースの会話を定期的に行うことで、新人が悩みを相談しやすい環境を作り、早期の適応をサポートできます。
業務の標準化をしておく
リモート環境では情報共有のズレが生じやすいため、業務の標準化が欠かせません。特に、新人がスムーズに業務を進めるためには、統一されたルールや手順書の整備が重要です。
標準化のポイント
項目 | 内容 |
マニュアル作成 | 画像や動画を活用し、直感的に理解しやすくする。定期的に更新し、最新情報を提供 |
チェックリストの活用 | 業務や研修の進捗を可視化し、先輩社員が状況を把握しやすくする |
テンプレートの共有 | メールやチャットの定型文、FAQを活用し、業務の効率化を図る |
例えば、「誰に聞けばいいのかわからない」業務に対応するためには、簡単なマニュアルを作成し配布することからオンボーディングを開始すると良いでしょう。このような仕組みを整備することで、新人が自発的に業務を進めやすくなり、教育の負担も軽減できます。また、業務の標準化が進めば、新人が迷うことなく作業を進められるため、教育の効率化と生産性向上にもつながります。
部署間横断型のコミュニティを活用する
リモート環境では、特定の部署内だけでなく、社内全体でのつながりを意識することが大切です。部署を横断するコミュニティを活用することで、新人が組織の全体像を理解しやすくなり、孤立を防ぐ効果も期待できます。
コミュニティ活用の方法
方法 | 内容 |
バディ・メンター制度 | 他部署の先輩と定期的に情報交換し、異なる視点からのアドバイスを得る |
オンライン掲示板・Slackチャンネル | 業務の質問やナレッジ共有を促進し、雑談の場も設ける |
クロスファンクショナルなプロジェクト | 部署を超えた課題解決に取り組み、会社全体のビジョンを理解しやすくする |
例えば、中途入社者向けに、3ヵ月間ランチを通じて相談しやすい関係を築く仕組みを整える、入社時期が異なる社員同士でも交流を促進する制度を導入するなども有効です。こうした施策は、リモート環境でもオンラインランチや雑談会として応用できます。
このような仕組みを導入することで、新人がスムーズに職場になじみ、幅広い知識や人脈を築ける環境を整えられるでしょう。
感謝を積極的に伝える
リモート環境では、相手の努力が見えにくく、モチベーションが低下しやすい傾向があります。そのため、感謝を積極的に伝えることが大切です。温かい歓迎や日々の感謝を伝える仕組みを取り入れることで、新人が安心して業務に取り組める環境を作れます。
感謝を伝える方法
方法 | 内容 |
ウェルカムボックスの活用 | 企業ロゴ入りのグッズを贈り、入社を歓迎(リモートならオンラインで入社式や歓迎会を開催) |
日常的な感謝の言葉 | 「ありがとう」「助かったよ」など短い言葉でも積極的に伝える。伝えやすい環境を用意する |
具体的な行動を褒める | 「〇〇の資料が分かりやすかった」「初めての業務なのにスムーズだったね」と伝える |
チーム全体で感謝を共有 | Slackなどのチャットツールや定例ミーティングで感謝を伝える場所・時間を設ける |
会社に感謝を伝える文化が根付くことで、新人も自信を持ちやすくなり、チーム全体の士気向上につながります。
まとめ
今回は、リモート環境下での早期新人教育について紹介しました。オンボーディングは、企業に入社をしてきた従業員を組織の一員として定着させて、戦力化させるまでのプロセスを指しますが、リモート環境下の早期新人教育の方法として最適です。オンボーディングの方法は、各企業で異なりますが、以下の点を意識することが大切です。
- タッチベースの会話による信頼関係の構築
- 業務の標準化をしておく
- 部署間横断型のコミュニティを活用する
- 感謝を積極的に伝える
ぜひ、リモート環境下での新人社員教育に悩まれている方は、本記事を参考にして実施してみてください。
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