特別インタビュー/セレブリックス・今井氏「営業活動で誰もが売れる仕組み化を実現するセールスイネーブルメントとは?」
みなさん。こんにちは。今回は、株式会社セレブリックス 執行役員 マーケティング本部長の今井晶也氏へのインタビュー記事を掲載します。今注目を集めている「セールスイネーブルメント」の考え方や取り組みについて教えて頂きました。
セレブリックス社はお客様の買わない理由を科学して、誰がやっても一定以上受注が獲得できる「売れる仕組み」を構築しています。この仕組みのコアになっているのが「顧客開拓メソッド」で、この独自に生み出したメソッドをもとに、12,000商品以上の営業支援実績を誇ります。
社内に蓄積されている営業活動データを解析し、営業スキルの平準化や成果コントロールを目指すのがセールスイネーブルメントです。しかしこのセールスイネーブルメントは、概念としてよく耳にする機会は増えたものの、具体的な活動としては今一つイメージが湧きません。
この記事では、セレブリックスのマーケティング本部長でありながら、法人営業や新規営業の研究や調査を行っているセールスエバンジェリストの今井さんに対して、セールスイネーブルメントのリアルに迫ります。
株式会社セレブリックス 執行役員 マーケティング本部長 兼セールスエバンジェリスト 今井晶也氏 セレブリックスのコーポレートブランディング、事業企画、マーケティング、営業の統括責任者を兼任。代表的な活動(講演内容)として、長野県の中小企業振興センターとの製造業向け新規開拓講座や、宣伝会議主催のセールスコンテンツ講義、営業の№1を決める大会であるS1グランプリの審査員等、多方面で活躍する。 また、商品内容に依存しないB2Bセールスの普遍バイブル「顧客開拓メソッド」を執筆するなど、活躍の幅は多岐に渡る。 株式会社セレブリックス セールスカンパニーについて リクルート出身者が編み出した営業コンサルティング業務を中核とする企業。営業コンサルティング事業・営業代行事業を中心に、世界や日本を代表する大手企業から、今をときめくスタートアップベンチャーまで、支援の幅は多岐に渡る。 2017年1月より博報堂のグループ会社に参画し、法人営業の顧客開拓に関連するあらゆる課題解決策を提供している。 ・公式サイト: https://www.eigyoh.com/
ーー御社が考えるセールスイネーブルメントとは? 今井 晶也氏(以下、敬称略) 弊社では、セールスイネーブルメントの定義を「売れるメカニズム(しくみ)」と示しています。 営業活動で集められる“生データ”を情報ソースとして、教育コンテンツを制作したり営業資料としてアウトプットしたりすることで、営業活動で“迷わない”“迷わせない”を目指すのです。 この誰がやっても成果が出やすくなるメカニズムは、仕組みを構築できても直ぐに業績に直結しません。運用を通して、都度繰り返し改善を行うことで、少しずつ自社の営業にフィットしてくるのです。つまり、セールスイネーブルメントは一生完了することのない「果てない試み」なのです。まさに営業組織の永遠のテーマであるとも言えます。 もちろん、私たちセレブリックスのセールスイネーブルメントも、実証実験のさなかにいまして、セールスイネーブルメントを極めたとはとても言い切れない状態です。 一方で、セレブリックスは営業の仕組み化をサービスメニューとして持つ企業なので、ある意味完成はされていないが、一定の法則・勝ちパターンは見えてきたという状態かもしれません。 ーー御社がセールスイネーブルメントに取り組んでいる理由とは? 今井 理由は2つあります。 ひとつは、セレブリックスの提供サービスが「営業支援」という無形のサービスなので、営業パーソンそれぞれのスキルや提案内容によって、カスタマーサクセスに繋がらない受注をしてしまう可能性があるからです。 もう少しわかりやすく表現するなら、無形で自由に提案ができるからこそ、熟練者と若手層で提案内容の深みや品質が変わってしまうのです。 こうした差を少しでも失くすために、事例コンテンツの活用やケーススタディといった「ツールを活用すること」で課題設定やプランニングのコントロールを図ったり、「研修やトレーニングメニュー」に反映させたりして、そもそものスキルや応酬話法のレベル差を失くしたいと考えています。 もうひとつは弊社ならではの理由ですが、営業代行・営業支援というサービスを提供しているので、弊社の社員がクライアント企業に代わって商品を営業しています。 この代行サービスを利用いただく上で、「人によってスキルや知識が全然違う」ということがあったら、ビジネスモデルとして残念ですよね。 率直にいえば、クライアント企業から「セレブリックスの社員さんは誰がやっても、直ぐに成果を上げられますよね」と価値を感じていただくために、営業力と成果を仕組みでコントロールしようとするのです。 ーーセールスイネーブルメントの取り組み方を具体的に教えてもらえますか? 今井 一般的にセールスイネーブルメントの取り組みは、 ①営業活動のデータ化 ②営業データの定量分析・定性分析 ③営業課題の設定と解決策の特定 ④解決に繋げる教育ツールの作成や営業ツールの設計 ⑤④に伴う教育の実施や営業ツールの運用 多少企業によって定義は異なれど、この①~⑤を繰り返し行っていくものが多いと考えます。 セレブリックスらしい特長は、この③と④の間に「メソッド化」というイベントを取り入れていることです。もっと言ってしまえば、セールスイネーブルメントとは、すなわち「オリジナルメソッドの構築とメソッドのデリバリー」といっても過言ではないと私は思います。 メソッドとは言い換えれば攻略本です。自社の商品を売るための「手法」が書き記されています。 このメソッドというハブを通さずに教育やコンテンツを届けていくと、対症療法のようにその場しのぎの対策で溢れかえってしまいます。 ※対症療法…表面化している症状を緩和させ、苦痛を和らげるための治療法 教育動画や営業ツールだけ増やしても、使われなければ意味がないですし、活用の仕方が理解できていなければ「焼け石に水」状態です。このことからセレブリックスでは、営業活動を通す中で「買われなかった理由」を紐解き、原因究明を行い、その上であるべき手法・対策としてメソッドに落とし込み、メソッドに準ずる形で、教育コンテンツや営業ツールに展開しています。 セレブリックスでは、最近この顧客開拓メソッド(セレブリックスオリジナルメソッド)の大幅リニューアルを行いまして、「Withコロナ時代の接点構築・オンライン商談」など、今、成果を出すために必要な手法や考え方をアップデートしていきました。 ページ数にして330ページを超える大作が出来て、社内・社外で話題にしていただいています。 ーーセールスイネーブルメントためのメソッドの更新頻度は? 今井 営業メソッドの更新頻度の理想は、各社で異なると思います。 セレブリックス社では、1年に1度のメソッドのリニューアルを目指しています。また、大規模のメソッド改修は3年に1度行っています。 経営環境や消費者の価値観は時代に伴い変化するため、メソッドが半永久的に通用するわけではなく、変化に伴うメソッド更新はしていかなければいけません。 ーーセールスイネーブルメントに取り組む際のポイントとは? 今井 セールスイネーブルメントに取り組む際のポイントは、データベースに蓄積された営業活動データを検証するだけではなく、定性的情報も収集することです。 成績に伸び悩んでいる営業担当者とコミュニケーションを取ってみると「商談相手が真剣に話を聞いてくれない気がする…」「オンライン商談の反応が悪い気がする…」と各自の悩みが聞けます。定量的情報だけではなく定性的情報も収集して、メソッドを作成します。 例えば、オンライン商談が普及したとき、「オンラインではお客様に質問や議論がしにくい」と多くの営業担当者が悩んでいました。 確かに、オンライン上で根掘り葉掘りお客様の情報を初対面で伺うのはお互いに抵抗があります。そこで問いの与え方を変える工夫をしました。 対面では相手を見ながら質問するのが基本だったものを、顧客事例やリサーチ資料など「コンテンツを主役」にして、お互いに画面を見ながら対話をするようにしてみました。そうすると、お客様がスムーズに自己開示や意見交換をしてくれるようになったのです。 あくまで一例のケースですが、売れた・売れなかったという決着情報だけでなく、数字的なデータには現れない、営業パーソンの声や意見を取り入れることで、商談場面で起きている不安要素を取り除いていくことが出来ます。 ーーセールスイネーブルメントを行う上での注意点はありますか? 今井 これは本当にあります。今、セールスイネーブルメントを取り組む前に戻れるとしたら、気を付けたいなと思うことは3つですね。 ①可変性をもつ ②裏を取る ③仮説をたてて取りに行くデータを決める です。 まず可変性の話ですが、いきなり大袈裟なメソッドを作ろうとすると、掛けた労力に見合わない成果となる可能性があります。特にスタートアップやベンチャー企業の場合、商品や戦略等、状況に応じてスピーディーな変化や環境適用が求められます。1か月後に営業手法の最適解が変わるなんてことも多々あるでしょう。そのような中で、メソッドを最初から固め過ぎても、現場にフィットしないコンテンツばかりになってしまいます。小さく始めて、修正しながらメソッドの対応幅を増やしていくことが失敗が少ないように感じますね。 ②裏を取るという点については、データの信憑性を大切にしたいということです。営業活動で仕入れた情報を「裏取り」もせずに、課題点として決めつけるのは危険だと考えます。営業が持ち寄ってくる情報には、多少なりとも主観は入りますし、失注等の結果と要因の因果が不明な状態で解決策を講じても、実際やってみたら成果が出ないということは多くあります。メソッド化する上で、最低限のサンプル数を集めて検証することは大切だと考えます。 ③仮説をたてて取りに行くデータを決めるという点は、コスト効率と始めやすさの観点です。データ解析系はお金が幾らあっても足りないので、すべてのデータを自動的に収集して分析できるかと言うと、それが出来るのは一部の企業でしょう。営業活動のどのプロセスが改善されると成果インパクトが大きいのか、アタリをつけて分析をしたり実験をするのが大切だと思います。 ーー営業担当者にメソッドを浸透させるために行っていることは? 今井 営業担当者にメソッドを浸透させるために、顧客開拓メソッド認定資格制度を設けました。 セレブリックス流メソッドを知っている、体現できるということが、仕事を任せる基準や信用の見える化に繋がりますので、昇格等の評価基準に紐づける運用をテスト実験させています。 セールスコンサルタント、シニアセールスコンサルタント、エグゼクティブセールスコンサルタント、プリンシパルセールスコンサルタントとランクが上がっていき、そのランクを取得していないと受けれない仕事あるなど、ある意味明確な区別をしています。 営業コンサルタントとしての、仕事の幅や市場価値を高めるためにも、社員一人ひとりが意欲的にメソッド資格を獲得しにいって欲しいという狙いがあります。 ちなみに、メンバーを持つチーフ以上の職級に上がるためには、必ずジュニアコンサルタントの資格を持っていないといけないというルールを検討しています。 ーーセールスイネーブルメントが注目を浴びている理由とは? 今井 近頃、セールスイネーブルメントが大きな注目を集めている理由は、デジタルツールが普及して、データを自動収集できるようになったからです。 大規模なシステム投資も一つの方法ですが、レブコム社のようなAI搭載型IP電話「MiiTel」を活用して、比較的カジュアルにセールスイネーブルメントも取り組めるようになりました。 実際にセレブリックスでも導入していますが、通話内容の録音以外にも、話速、ラリー回数、被り率などを検証できる性能の高さが魅力的です。 MiiTelで自動収集できる営業活動データを解明すれば、トップセールスと成約に伸び悩む営業担当者の差を解明することができ、売れる仕組み化「メソッド」が作りやすくなります。 ーーセールスイネーブルメントが社内で行えない場合はどうすれば良いですか? 今井 営業トークになってしまいますが、セレブリックスのような外部の専門家に相談するのも一つの手です。極論、セレブリックスじゃなくても相談はしてみても良いと思います。 よく「家は3回建て直さないと本当に満足する家にはならない」といいますが、建ててみて&住んでみないとわからないことは沢山あります。 イネーブルメントを自社で行ったり、イネーブルメント支援を行っている会社であれば、相応の成功体験や失敗体験を持っていますので、「3回目に建てる家」の状態で取り組むことが出来ると思います。実際にメソッド作成やセールスイネーブルメントに関連するお問い合わせは最近とても増えました。 ーー最後にセールスイネーブルメントに取り組みたい企業に一言をお願いします。 今井 セールスイネーブルメントの定義は「売れるメカニズム(仕組み)をつくること」です。 誰でも明日から見て学べる、真似て成果が出せる攻略本を作っておけば、どこで・誰が働いてもある程度平準化された成果を出せるようになります。つまり、営業のダイバーシティを推進できるようになります。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、リモート営業が開始されましたが、コロナ収束後もリモート営業は必要不可欠なものとなり、働き方の多様性として定着するでしょう。 例えば、幼児を育てているママが保育園に預けている時間に、自宅で営業をするというスタイルも珍しくなくなってくるはずです。このように、働き方は多用化していく中で、セールスイネーブルメントによるメソッドづくり(やり方の言語化)は必要不可欠なものとなるでしょう。 働き方や、働く人が多種多様になったとしても、営業として高い顧客満足度を維持することは諦めたくないはずですし、追求すべきだと考えます。 その切り札が、恐らくセールスイネーブルメントの取り組みやメソッド作りになるんだろうなと考えます。少しでも、皆様の参考になれば嬉しいです。 ーーインタビューへの協力をして頂きまして、誠にありがとうございました。
まとめ 今回は、営業支援で豊富な実績を誇るセレブリックス社に、セールスイネーブルメントの取り組み方について教えていただきました。 セールスイネーブルメントとは、データベースに蓄積された営業活動データを解析して、誰でも再現すれば一定の受注を獲得できるメソッドを作ること。メソッド化したものを教育動画や営業資料、攻略本に落とし込めば、下記の効果が見込めます。 【セールスイネーブルメントの効果】
株式会社セレブリックス 執行役員 マーケティング本部長 兼セールスエバンジェリスト 今井晶也氏 セレブリックスのコーポレートブランディング、事業企画、マーケティング、営業の統括責任者を兼任。代表的な活動(講演内容)として、長野県の中小企業振興センターとの製造業向け新規開拓講座や、宣伝会議主催のセールスコンテンツ講義、営業の№1を決める大会であるS1グランプリの審査員等、多方面で活躍する。 また、商品内容に依存しないB2Bセールスの普遍バイブル「顧客開拓メソッド」を執筆するなど、活躍の幅は多岐に渡る。 株式会社セレブリックス セールスカンパニーについて リクルート出身者が編み出した営業コンサルティング業務を中核とする企業。営業コンサルティング事業・営業代行事業を中心に、世界や日本を代表する大手企業から、今をときめくスタートアップベンチャーまで、支援の幅は多岐に渡る。 2017年1月より博報堂のグループ会社に参画し、法人営業の顧客開拓に関連するあらゆる課題解決策を提供している。 ・公式サイト: https://www.eigyoh.com/
ーー御社が考えるセールスイネーブルメントとは? 今井 晶也氏(以下、敬称略) 弊社では、セールスイネーブルメントの定義を「売れるメカニズム(しくみ)」と示しています。 営業活動で集められる“生データ”を情報ソースとして、教育コンテンツを制作したり営業資料としてアウトプットしたりすることで、営業活動で“迷わない”“迷わせない”を目指すのです。 この誰がやっても成果が出やすくなるメカニズムは、仕組みを構築できても直ぐに業績に直結しません。運用を通して、都度繰り返し改善を行うことで、少しずつ自社の営業にフィットしてくるのです。つまり、セールスイネーブルメントは一生完了することのない「果てない試み」なのです。まさに営業組織の永遠のテーマであるとも言えます。 もちろん、私たちセレブリックスのセールスイネーブルメントも、実証実験のさなかにいまして、セールスイネーブルメントを極めたとはとても言い切れない状態です。 一方で、セレブリックスは営業の仕組み化をサービスメニューとして持つ企業なので、ある意味完成はされていないが、一定の法則・勝ちパターンは見えてきたという状態かもしれません。 ーー御社がセールスイネーブルメントに取り組んでいる理由とは? 今井 理由は2つあります。 ひとつは、セレブリックスの提供サービスが「営業支援」という無形のサービスなので、営業パーソンそれぞれのスキルや提案内容によって、カスタマーサクセスに繋がらない受注をしてしまう可能性があるからです。 もう少しわかりやすく表現するなら、無形で自由に提案ができるからこそ、熟練者と若手層で提案内容の深みや品質が変わってしまうのです。 こうした差を少しでも失くすために、事例コンテンツの活用やケーススタディといった「ツールを活用すること」で課題設定やプランニングのコントロールを図ったり、「研修やトレーニングメニュー」に反映させたりして、そもそものスキルや応酬話法のレベル差を失くしたいと考えています。 もうひとつは弊社ならではの理由ですが、営業代行・営業支援というサービスを提供しているので、弊社の社員がクライアント企業に代わって商品を営業しています。 この代行サービスを利用いただく上で、「人によってスキルや知識が全然違う」ということがあったら、ビジネスモデルとして残念ですよね。 率直にいえば、クライアント企業から「セレブリックスの社員さんは誰がやっても、直ぐに成果を上げられますよね」と価値を感じていただくために、営業力と成果を仕組みでコントロールしようとするのです。 ーーセールスイネーブルメントの取り組み方を具体的に教えてもらえますか? 今井 一般的にセールスイネーブルメントの取り組みは、 ①営業活動のデータ化 ②営業データの定量分析・定性分析 ③営業課題の設定と解決策の特定 ④解決に繋げる教育ツールの作成や営業ツールの設計 ⑤④に伴う教育の実施や営業ツールの運用 多少企業によって定義は異なれど、この①~⑤を繰り返し行っていくものが多いと考えます。 セレブリックスらしい特長は、この③と④の間に「メソッド化」というイベントを取り入れていることです。もっと言ってしまえば、セールスイネーブルメントとは、すなわち「オリジナルメソッドの構築とメソッドのデリバリー」といっても過言ではないと私は思います。 メソッドとは言い換えれば攻略本です。自社の商品を売るための「手法」が書き記されています。 このメソッドというハブを通さずに教育やコンテンツを届けていくと、対症療法のようにその場しのぎの対策で溢れかえってしまいます。 ※対症療法…表面化している症状を緩和させ、苦痛を和らげるための治療法 教育動画や営業ツールだけ増やしても、使われなければ意味がないですし、活用の仕方が理解できていなければ「焼け石に水」状態です。このことからセレブリックスでは、営業活動を通す中で「買われなかった理由」を紐解き、原因究明を行い、その上であるべき手法・対策としてメソッドに落とし込み、メソッドに準ずる形で、教育コンテンツや営業ツールに展開しています。 セレブリックスでは、最近この顧客開拓メソッド(セレブリックスオリジナルメソッド)の大幅リニューアルを行いまして、「Withコロナ時代の接点構築・オンライン商談」など、今、成果を出すために必要な手法や考え方をアップデートしていきました。 ページ数にして330ページを超える大作が出来て、社内・社外で話題にしていただいています。 ーーセールスイネーブルメントためのメソッドの更新頻度は? 今井 営業メソッドの更新頻度の理想は、各社で異なると思います。 セレブリックス社では、1年に1度のメソッドのリニューアルを目指しています。また、大規模のメソッド改修は3年に1度行っています。 経営環境や消費者の価値観は時代に伴い変化するため、メソッドが半永久的に通用するわけではなく、変化に伴うメソッド更新はしていかなければいけません。 ーーセールスイネーブルメントに取り組む際のポイントとは? 今井 セールスイネーブルメントに取り組む際のポイントは、データベースに蓄積された営業活動データを検証するだけではなく、定性的情報も収集することです。 成績に伸び悩んでいる営業担当者とコミュニケーションを取ってみると「商談相手が真剣に話を聞いてくれない気がする…」「オンライン商談の反応が悪い気がする…」と各自の悩みが聞けます。定量的情報だけではなく定性的情報も収集して、メソッドを作成します。 例えば、オンライン商談が普及したとき、「オンラインではお客様に質問や議論がしにくい」と多くの営業担当者が悩んでいました。 確かに、オンライン上で根掘り葉掘りお客様の情報を初対面で伺うのはお互いに抵抗があります。そこで問いの与え方を変える工夫をしました。 対面では相手を見ながら質問するのが基本だったものを、顧客事例やリサーチ資料など「コンテンツを主役」にして、お互いに画面を見ながら対話をするようにしてみました。そうすると、お客様がスムーズに自己開示や意見交換をしてくれるようになったのです。 あくまで一例のケースですが、売れた・売れなかったという決着情報だけでなく、数字的なデータには現れない、営業パーソンの声や意見を取り入れることで、商談場面で起きている不安要素を取り除いていくことが出来ます。 ーーセールスイネーブルメントを行う上での注意点はありますか? 今井 これは本当にあります。今、セールスイネーブルメントを取り組む前に戻れるとしたら、気を付けたいなと思うことは3つですね。 ①可変性をもつ ②裏を取る ③仮説をたてて取りに行くデータを決める です。 まず可変性の話ですが、いきなり大袈裟なメソッドを作ろうとすると、掛けた労力に見合わない成果となる可能性があります。特にスタートアップやベンチャー企業の場合、商品や戦略等、状況に応じてスピーディーな変化や環境適用が求められます。1か月後に営業手法の最適解が変わるなんてことも多々あるでしょう。そのような中で、メソッドを最初から固め過ぎても、現場にフィットしないコンテンツばかりになってしまいます。小さく始めて、修正しながらメソッドの対応幅を増やしていくことが失敗が少ないように感じますね。 ②裏を取るという点については、データの信憑性を大切にしたいということです。営業活動で仕入れた情報を「裏取り」もせずに、課題点として決めつけるのは危険だと考えます。営業が持ち寄ってくる情報には、多少なりとも主観は入りますし、失注等の結果と要因の因果が不明な状態で解決策を講じても、実際やってみたら成果が出ないということは多くあります。メソッド化する上で、最低限のサンプル数を集めて検証することは大切だと考えます。 ③仮説をたてて取りに行くデータを決めるという点は、コスト効率と始めやすさの観点です。データ解析系はお金が幾らあっても足りないので、すべてのデータを自動的に収集して分析できるかと言うと、それが出来るのは一部の企業でしょう。営業活動のどのプロセスが改善されると成果インパクトが大きいのか、アタリをつけて分析をしたり実験をするのが大切だと思います。 ーー営業担当者にメソッドを浸透させるために行っていることは? 今井 営業担当者にメソッドを浸透させるために、顧客開拓メソッド認定資格制度を設けました。 セレブリックス流メソッドを知っている、体現できるということが、仕事を任せる基準や信用の見える化に繋がりますので、昇格等の評価基準に紐づける運用をテスト実験させています。 セールスコンサルタント、シニアセールスコンサルタント、エグゼクティブセールスコンサルタント、プリンシパルセールスコンサルタントとランクが上がっていき、そのランクを取得していないと受けれない仕事あるなど、ある意味明確な区別をしています。 営業コンサルタントとしての、仕事の幅や市場価値を高めるためにも、社員一人ひとりが意欲的にメソッド資格を獲得しにいって欲しいという狙いがあります。 ちなみに、メンバーを持つチーフ以上の職級に上がるためには、必ずジュニアコンサルタントの資格を持っていないといけないというルールを検討しています。 ーーセールスイネーブルメントが注目を浴びている理由とは? 今井 近頃、セールスイネーブルメントが大きな注目を集めている理由は、デジタルツールが普及して、データを自動収集できるようになったからです。 大規模なシステム投資も一つの方法ですが、レブコム社のようなAI搭載型IP電話「MiiTel」を活用して、比較的カジュアルにセールスイネーブルメントも取り組めるようになりました。 実際にセレブリックスでも導入していますが、通話内容の録音以外にも、話速、ラリー回数、被り率などを検証できる性能の高さが魅力的です。 MiiTelで自動収集できる営業活動データを解明すれば、トップセールスと成約に伸び悩む営業担当者の差を解明することができ、売れる仕組み化「メソッド」が作りやすくなります。 ーーセールスイネーブルメントが社内で行えない場合はどうすれば良いですか? 今井 営業トークになってしまいますが、セレブリックスのような外部の専門家に相談するのも一つの手です。極論、セレブリックスじゃなくても相談はしてみても良いと思います。 よく「家は3回建て直さないと本当に満足する家にはならない」といいますが、建ててみて&住んでみないとわからないことは沢山あります。 イネーブルメントを自社で行ったり、イネーブルメント支援を行っている会社であれば、相応の成功体験や失敗体験を持っていますので、「3回目に建てる家」の状態で取り組むことが出来ると思います。実際にメソッド作成やセールスイネーブルメントに関連するお問い合わせは最近とても増えました。 ーー最後にセールスイネーブルメントに取り組みたい企業に一言をお願いします。 今井 セールスイネーブルメントの定義は「売れるメカニズム(仕組み)をつくること」です。 誰でも明日から見て学べる、真似て成果が出せる攻略本を作っておけば、どこで・誰が働いてもある程度平準化された成果を出せるようになります。つまり、営業のダイバーシティを推進できるようになります。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、リモート営業が開始されましたが、コロナ収束後もリモート営業は必要不可欠なものとなり、働き方の多様性として定着するでしょう。 例えば、幼児を育てているママが保育園に預けている時間に、自宅で営業をするというスタイルも珍しくなくなってくるはずです。このように、働き方は多用化していく中で、セールスイネーブルメントによるメソッドづくり(やり方の言語化)は必要不可欠なものとなるでしょう。 働き方や、働く人が多種多様になったとしても、営業として高い顧客満足度を維持することは諦めたくないはずですし、追求すべきだと考えます。 その切り札が、恐らくセールスイネーブルメントの取り組みやメソッド作りになるんだろうなと考えます。少しでも、皆様の参考になれば嬉しいです。 ーーインタビューへの協力をして頂きまして、誠にありがとうございました。
まとめ 今回は、営業支援で豊富な実績を誇るセレブリックス社に、セールスイネーブルメントの取り組み方について教えていただきました。 セールスイネーブルメントとは、データベースに蓄積された営業活動データを解析して、誰でも再現すれば一定の受注を獲得できるメソッドを作ること。メソッド化したものを教育動画や営業資料、攻略本に落とし込めば、下記の効果が見込めます。 【セールスイネーブルメントの効果】
- 営業担当者が自信を持って営業活動に取り組めるように支援できる
- 営業力を上げて、顧客満足度を上げることができる
- 営業成績が伸び悩んでいる担当者も一定の受注率が獲得できる
- リモート営業でも営業力マネジメントがしやすくなる