Vol.4 営業の本質とは?個人,組織の営業力を上げるためには?
日米対比に見る営業組織論とIT投資
全3回にわたって、どうしたら個人の営業力が上がるかについてご説明しましたが、今回から2回にわたり組織の営業力を上げるためにはどうしたら良いかについてお話したいと思います。
経営層、管理職の方のみならず、ご担当者の方にもお読み頂き視野を広げる機会になれば幸いです。
[1] Sales technology solutionsに関する投資は、2017年には$4,581(110円/ドル換算で約50万円)となり、2014年の$2,546から約+80%増。(米国インサイドセールス協会調べ) [2] 従業者一人当たり情報処理関係諸経費(平成26年度、経済産業省調べ)
ちなみに、米国の企業がセールスに多くの資本を投下する目的は、主に以下2点です。 1)【コスト削減】営業活動を可視化させ、管理工数を削減する 2)【利益増大】マーケティング、セールス、カスタマーサクセスの部門間連携を図り生産性を高める 1) 営業活動の可視化は、顧客情報や営業進捗の管理に主眼を置いており、人手を使い膨大な工数をかけていた管理業務の効率化を図ることが主目的で、コスト削減要素が強いです。 2) 部門連携は、部門間の連携を密に図ることで適切なリード(見込み客)に適切なタイミングでアプローチすることに主眼を置いており、成約率を上げることが主目的で、利益増大要素が強いです。 最近では特に、2)部門連携を図るIT投資に注力する企業が増えています。 なぜなら、顧客の課題の細分化/多様化と共に各部門の役割も細分化/多様化しており、密に連携を図らないと成果が上がらなかったり、各部門の業務が被って無駄が生じたりするからです。 逆に、上手く連携すると狙ったターゲット層に適切なタイミングでアプローチできるため成約率が高まり、気合いと根性の営業から生産性の高い営業にシフトすることが出来ます。 つまり、顧客の課題が多様化するなかで、プロダクト/サービス自体で差別化することが困難になり、オペレーションの最適化で差別化を図るようになったと言えます。
おさらい
まずは前回までのおさらいですが、個人の営業力を高めるためには以下のマインドセット/スキルセットを持って、自ら売り込まなくても顧客が勝手に買ってくれる状況をいかに作るかであることをお伝え致しました。 マインドセット: 「プロダクト/サービスを売る」のではなく、「顧客の時間的/経済的価値を最大化させるにはどうしたら良いか考える」。 スキルセット: 視野・視座・視点を変えてInput力/Output力を高めて、潜在ニーズを探り出すための「発見のための質問」と「発展のための質問(定量情報を含む)」をする。 繰り返しになりますが、顧客の時間的/経済的価値を最大化させるためには、まず顧客がどんな悩み・課題を抱えているか把握しなければなりません。一方で、テクノロジーの普及や顧客自身の工夫の積み重ねによって多くの課題は既に解決され、課題が細分化・多様化しており発見するのが難しくなっています。 その証拠に、マーケティングはテクノロジーを活かして急速に細分化しており、詳細なペルソナに基づいたOne to Oneマーケティング(ABM、データドリブンマーケティングなど)が主流になっています。 他方で、営業に目を向けてみると、数多く打てば当たる根性論・気合論だったり、ハイパフォーマーに頼る属人的な営業スタイルが主流となっており、日本ではテクノロジーを活かしきれていないのが現状です。海外の営業関連投資
海外に目を向けると、例えば米国ではセールスに最先端のテクノロジーを積極的に取り込んでいます。具体的にはSalesforce、HubSpot、Zoho、Pipedriveなど、皆さんもどれか一つは耳にしたことがあるか、既に導入している企業の方もいらっしゃるかと思います。 米国では、営業関連サービスだけでも営業担当者一人当たり年間約50万円投資[1]しています。 一方、日本では営業関連サービスに対する投資の統計データすら存在ないので単純比較はできませんが、営業に対するIT投資のみならず全社のIT投資を合算しても従業員一人当たり年間約55万円[2]にしかなりません。 すなわち、従業員一人当たりのIT投資でみると、米国企業が営業のみに投下している資本≒日本企業が全社に投下している資本ということになります。「日本企業は、守りに対するIT投資は積極的だが、攻めに対するIT投資は消極的。」と良く言われますが、そのことが良く分かります。[1] Sales technology solutionsに関する投資は、2017年には$4,581(110円/ドル換算で約50万円)となり、2014年の$2,546から約+80%増。(米国インサイドセールス協会調べ) [2] 従業者一人当たり情報処理関係諸経費(平成26年度、経済産業省調べ)
ちなみに、米国の企業がセールスに多くの資本を投下する目的は、主に以下2点です。 1)【コスト削減】営業活動を可視化させ、管理工数を削減する 2)【利益増大】マーケティング、セールス、カスタマーサクセスの部門間連携を図り生産性を高める 1) 営業活動の可視化は、顧客情報や営業進捗の管理に主眼を置いており、人手を使い膨大な工数をかけていた管理業務の効率化を図ることが主目的で、コスト削減要素が強いです。 2) 部門連携は、部門間の連携を密に図ることで適切なリード(見込み客)に適切なタイミングでアプローチすることに主眼を置いており、成約率を上げることが主目的で、利益増大要素が強いです。 最近では特に、2)部門連携を図るIT投資に注力する企業が増えています。 なぜなら、顧客の課題の細分化/多様化と共に各部門の役割も細分化/多様化しており、密に連携を図らないと成果が上がらなかったり、各部門の業務が被って無駄が生じたりするからです。 逆に、上手く連携すると狙ったターゲット層に適切なタイミングでアプローチできるため成約率が高まり、気合いと根性の営業から生産性の高い営業にシフトすることが出来ます。 つまり、顧客の課題が多様化するなかで、プロダクト/サービス自体で差別化することが困難になり、オペレーションの最適化で差別化を図るようになったと言えます。
インサイドセールスの重要性の高まり
さらに米国では、IT投資に加え、営業組織の見直しも加速しており、営業組織を①インサイドセールス(内勤営業)と、②フィールドセールス(外勤営業)の2つに分けるようになりました。 そして近年、インサイドセールスの重要性が増しています。 米Forbes紙に掲載された「2017 Sales Trend Research: Inside Sales vs. Outside Sales」によると、大企業(売上高 5,000万ドル以上)では、営業リソースの30.2%をインサイドセールスが担っており、2018年にはこの割合が40.3%まで増加するとの予測を示しています。 また、中堅以下の企業(売上高5,000万ドル未満)では営業リソースの47%をインサイドセールスが担っており、大企業を大幅に上回っていることが分かりました。 営業時間配分を調べた別の調査によると、フィールドセールスの配分が大幅に減少し、インサイドセールスの配分が大幅に増加しているという結果も出ています(図1ご参照)。 米国ではインサイドセールスを導入する企業が過去10年間漸増しており、特にここ数年は急増しているのです。 図1 「米国における営業時間配分の推移」出典:Bureau of Labor Statistics, TOPO 2015年3月このように、直近10年程度で米国においてインサイドセールスを導入する企業が漸増しており、特にここ数年は急増しています。
ちなみに、日本でも2015年あたりからインサイドセールスが取り沙汰されるようになり、2017年頃から急速に伸び始めました。今後もこの流れは加速していき、2020年には市場規模が2,070億円に達するという推計も出ています(図2ご参照)。
図2 インサイドセールス市場の成長予測ベルフェイス社 HPより抜粋