Vol.5 営業の本質とは?個人,組織の営業力を上げるためには?
利益を増大させるインサイドセールスのメカニズム
前回、米国でインサイドセールスが急拡大しており、日本でも今後急速に広まっていくことをお伝えいたしました。
今回は、そもそもインサイドセールスとは何なのか?なぜ多くの米国企業が導入・強化しているのかについてご説明します。
インサイドセールスとは
近年、日本でもインサイドセールスが広く提唱されるようになり、どこかで見聞きした方や、既に会社で取り入れている方も少なくないと思いますが、まずは「インサイドセールスとは何か」についてご説明します。 最初に、インサイドセールスの目的からご説明すると、「商談数と成約率の増加による利益の最大化」です。 どういうことか分解してご説明します。 まず、①利益を最大化(増加)させるためには、③追加投下資本以上に②売上を増やす必要があります。 ①利益増加 = ②売上増加 - ③追加投下資本 次に、②売上を増加させるためには、④商談数と⑤成約率を上げる必要があります。 ②売上増加 = ④商談数増加 × ⑤成約率向上 そして、④商談数を増加させるためには、⑥見込み客(以下、リード)の数と、⑦リードの質と、⑧アプローチの数を上げる必要があります。 ④商談数増加 = ⑥リードの数 × ⑦リードの質 × ⑧アプローチの数 更に、⑤成約率を向上させるためには、⑨営業の質と⑩プロダクト/サービスの質を上げる必要があります。 ⑤成約率向上 = ⑨営業の質 × ⑩プロダクト/サービスの質 インサイドセールスを導入すると、⑦リードの質、⑧アプローチの数、⑨営業の質が向上します。 その結果として④商談数(⑦⑧に比例)と⑤成約率(⑨に比例)を増加させることが出来るのです。 インサイドセールス導入後に効果が表れる時系列順で言うと、下記の通りです。 ⑧アプローチの数↑ ⇓ ⑨営業の質↑ ⇓ ⑦リードの質↑ 具体的には下記の通りです。 ⑧アプローチの数↑ 従来の営業では、アポ→移動→商談→報告、という一連のプロセスを全て一人でこなす必要があるため、アプローチできる顧客数は、多くても4件/日ほどです。しかし、内勤型のインサイドセールスは移動時間が無いため、少なくとも40件/日以上アプローチ可能となります。 これまでに、Insidesales.com, Laura Ramos(Forrester Research, Principal Analyst), Jacques Werth (President, High Probability Selling), Michael Bolduc(Author)など多くの調査機関や研究者がセールスパーソンのアプローチ数について定量的な調査を実施してきました。 どの調査も定量的に実施された為、結果はどれも近似しており、下記のような結果に収束します(調査例1,2ご参照)。~ 定量調査結果 ~
調査例1 セールスパーソンのアプローチ数: 約48%は見込み顧客に1回だけアプローチして、そこでやめてしまう(2度とアプローチしない) 約25%は2回接触をしたら、そこでやめてしまう 約12%が3回接触して、そこでやめてしまう 僅か10%が4回以上見込み客にアプローチする アプローチ回数と、商談化率(パイプライン率)の割合: 1回目のアプローチ:約2% 2回目のアプローチ:約3% 3回目のアプローチ:約5% 4回目のアプローチ:約10% 残り約80%が、5~12回目のアプローチで初めて成立! ※参考:マイケル・ボルダック『売れる技術』 調査例2 30%以上のリードは、一度もアプローチされないで葬られる。1顧客当たりのアプローチ数を数回増やすだけで、希望していたコンタクトパーソンに繋がる率が最大+70%増加する。1顧客当たり、少なくとも6回はアプローチすること。 ※Insidesales.com調べ~ 定量調査結果 ~
アポイント取得経験のある方は実際に経験していると思いますが、見込み顧客に架電しても、打ち合わせ/外出/席外しで不在のことが大半です。従来型の訪問営業の場合、アポを取らなきゃいけないし、アポ済の顧客を訪問しなければいけないし、結果報告しなければいけないし、、、やることが次から次へと降ってきます。 また、新しいリード(見込み客リスト)は増える一方なので、よほどのマルチタスカーでない限り、電話が通じなかった顧客をリスト化して1顧客当たり5回以上アプローチするのは難しいのが現実です(気合と根性でヤレと言われても、無理なものは無理)。 そこで、アプローチ部隊と、商談/クロージング部隊を分けて分業すると、担当者1人当たりのアプローチできる顧客数と、顧客当たりのアプローチ数が共に増えるため、商談数が劇的に増加します。 この、アプローチ専任部隊がインサイドセールスという新しい営業組織なのです。 ちなみに、商談/クロージング専任部隊は、一般的にフィールドセールスと呼ばれます。 ⑨営業の質↑ ここまで読んで「インサイドセールスって、単なるテレアポ部隊じゃん」と思う方も少なからずいらっしゃると思いますが、「テレアポ」と「インサイドセールス」は似て非なるものです。 実は、インサイドセールスはマーケティングの要素を多分に含んでおり、マーケティング部門にインサイドセールスチームを置く企業も多くあります。 インサイドセールスは、単なるアポイント取得だけではなく、業務プロセスは下記の通り多岐に亘ります。仮説→ヒアリング→提案→アポイント取得→情報共有(toマーケ、toフィールドセールス:外勤営業、toカスタマーサクセス)という一連の役割を担っており、いわば司令塔のような存在なのです。インサイドセールスの業務プロセス
- マーケと策定したペルソナ(ターゲット顧客層)に応じて、各顧客が抱えているであろう課題の仮説を立てる(課題の仮説の立て方は”営業力を劇的に上げる視野・視座・視点の変え方”で記載した通り)
- 各ペルソナの課題感に応じてリードを点数化して優先順位を付ける
- 電話を掛ける前に、顧客情報(誰に何を幾らでどの様に売っているのか)を収集する
- 優先順に応じて各顧客に電話を掛けて、以下の流れでアプローチ(顧客への質問の仕方は”営業力を劇的に上げる質問力”でご説明した通り) A.顧客の顕在/潜在課題をヒアリング B.自社のサービスやプロダクトが、どのように課題解決に寄与するかについて説明 C.アポイント取得 D.ラップアップ(課題を再度整理/確認)
- ヒアリング内容と、顧客への説明内容を商談/クロージング担当(フィールドセールス)に共有する。
- 必要に応じて、ペルソナの見直しをマーケティングに提案。クロスセル/アップセル(他商品/同商品の追加購入)の可能性をカスタマーサクセス担当に報告
~ 具体例 ~
- 当初、マーケティングとインサイドセールスで協議の上、メインターゲットは以下と定義した: 「マーケットインの発想で、自社のプロダクト/サービス/データベースを顧客毎にカスタマイズして提案営業している企業:具体的には、(1)企業向け研修提供会社、(2)人材紹介会社、(3)システム開発会社、(4)営業代行業者」
- インサイドセールスが、各顧客の課題をヒアリングしていくうちに、実は金融機関が「自社内でのコミュニケーションをコンプライアンス目的で可視化するニーズ」を持っていることが判明した為、マーケティングと再度協議の上、ペルソナを追加。
- 現行ターゲットである「マーケットインの発想を持つ企業」と、新規ターゲットである「コンプライアンス強化を図る金融機関」ではニーズが異なる(営業を科学するv.s.社内コミュニケーションのモニタリング)。従って、マーケティングは訴求ポイントを変えてプロモーションの上、金融関連のリード取集をしてインサイドセールスに渡す。
- インサイドセールスは、渡された金融関連のリードに電話を掛けて、仮説(コンプラ目的での社内コミュニケーションのモニタリングというニーズ)が本当に合っているかヒアリングしながら検証する。
- ヒアリング結果、ニーズは多くあったのでアポ取得の上、フィールドセールスに引継ぎクロージング。
- 結果として新たな市場開拓につながり、アプローチできる市場規模が倍以上になった。
~ 具体例 ~
このように、ターゲット顧客の見直しが、新たな市場開拓につながり事業が一気に拡大するという事例は国内外で少なからずあり、ターゲット見直しの重要性を疑う余地はありません。 インサイドセールスを導入すれば、迅速にターゲット顧客を見直すことができ、リードの質を向上させるだけでなく、新たな市場を開拓するきっかけにもなるのです。