連続インタビューVol.6 ビズリーチ・茂野氏「インサイドセールス導入後に注意すべき、組織間のコミュニケーションや体制構築」

みなさん、こんにちは。

株式会社ビズリーチ インサイドセールス部 部長 茂野 明彦氏へのロングインタビュー、第6回です。

前回は、「業務を円滑にするために工夫しているポイント」、「反省を元に取り組んだこと」を中心にお話を伺いました。

今回は「インサイドセールス導入後に注意すべき、組織間のコミュニケーションや体制構築」についてお話していただきました。


株式会社ビズリーチ
キャリアカンパニービジネスマーケティング本部 インサイドセールス部 部長
茂野 明彦氏 / Akihiko Shigeno
大手インテリアメーカーを経て、人材系ベンチャー企業に転職。5年間大手通信会社に出向後、自社に戻り研修事業を立ち上げる。2012年8月、株式会社セールスフォース・ドットコムに入社し、グローバルで初のインサイドセールス企画トレーニング部門立ち上げに携わる。2016年12月、ビズリーチ入社。現在は、インサイドセールスグループとマーケティンググループを統括する。
※所属・役職等は取材時のものです。

立ちはだかる高いハードル

――茂野さんご入社後、組織改革を推進するなかで、伸び悩んだりした時期はありましたか?

茂野
はい、2017年8、9月にありました。
組織体制の変更に加え、研修を終えたばかりの新卒社員をインサイドセールスチームに迎え入れたのですが、体制構築不足や予算設計のズレなどが重なり、8月の予算達成率が89%まで落ち込んでしまいました。

当初は新しい体制ということもあり、仕方がないと思っていました。しかし、改善が見られると思っていた9月には、89%から60%台へと達成率が大幅に下がってしまいました。

インサイドセールスは「会社のエンジンである」と公言しているにも関わらず不甲斐ない結果になってしまい、猛省したことを覚えています。

そこからは予算設計について数字を全部計算し直したり、若手社員だけのチームに中堅社員もスーパーバイザー的に入って貰う等の対応をしました。とにかく様々な施策を打って、リード数と商談数を増やすために1ヶ月半ほど試行錯誤しました。雰囲気は良く、楽しく取り組んでいましたが、結果が出ずに試行錯誤している時期は辛かったです。

――根本的な原因は何だったのでしょうか?

茂野
期待を高く持ちすぎたこと、目標設定を高くし過ぎたことだと思います。さらに、採用ニーズが薄いお客様に対してもアプローチしてしまっていたこともありました。

また、一気に多くの若手メンバーを迎え入れた結果、マネジメント陣のフォローアップが隅々まで行き渡らず、メンバーが継続的に結果を残せる様な体制を担保できませんでした。そうした様々な問題が重なり、目標を下回る結果になってしまいました。

――リード数と商談数を増やすために1ヶ月半ほど様々な試行錯誤をなさったとの事ですが、具体的にどの様な施策を実行したのでしょうか??

茂野
まずは現状を把握するために全ての数字を計算し直しました。戦略策定の上、数値分析の出来るメンバーを社内からアサインし、効果検証を何度も行いました。

ビズリーチには、若いうちに色々なチャレンジをし、経験豊富な中堅社員が沢山います。そのような中堅社員に経験の浅いメンバーをサイドバイサイドで支援をしてもらいました。このサポート体制を変えた影響は大きかったと思います。

これらの地道な改善活動が功を成し、10月には目標を達成することが出来ました。

インサイドセールスは高度なコミュニケーションスキルが求められる部署である

――インサイドセールスを導入後、他部門からコミュニケーションや連携で困難だったことはありましたか?

茂野
はい、フィールドセールスから「パイプラインをもっと増やしたいのですが、どういう状況か教えてください」という話がよくありました。
高田さん、他には何かありましたか?


高田 佳政氏 プロフィール
株式会社ビズリーチ ビジネスマーケティング部 インサイドセールスグループ マネージャー
2015年 ビズリーチに入社。
主にスタートアップ、ベンチャー、中小企業様を担当し、ダイレクト・リクルーティングコンサルタントとして採用と事業成長を支援。ビジネスマーケティング部 インサイドセールスグループのマネージャーとして組織をまとめる。
※所属・役職等はインタビュー取材時のものです。


高田
フィールドセールスからは「電話でお客様の課題をヒアリングする際に、もっと詳細に聞いて欲しい」、インサイドセールスからは「もっと受注確度を高めて欲しい」という意見のすり合わせが必要なことが多々あります。

これらはどの会社でも起きうることだと思いますが、成果を上げていきたい気持ちは同じですので、互いに仕事のクオリティーを上げて、解決を図っていかなければならないと考えています。

――フィールドセールス以外ではいかがでしたか?
茂野
マーケティング部とも意見のすり合わせが必要なことが多くあります。例えば、インサイドセールス側としては「リードの数を増やして欲しい」「リードの質を上げてほしい」という意見がありますし、逆にマーケティング側からは「リードのフォローをきめ細かくして欲しい」といった意見が飛び交います。

日頃から密にコミュニケーションを取っていると、こうした意見のすり合わせが出来るようになります。
最近のセールス&マーケティングは”定量的なデータに裏付けられたリーズニング(論理的思考や説明)を求められる傾向にあります。例えば「売上へのインパクトはどうなのか?」、「経済合理性はあるのか?」「ROIはちゃんと出ているのか?」などです。セールス、マーケティングが密にコミュニケーションを取って日頃から情報交換していれば健全な議論をスピーディーに出来るようになります。

――他部門間との連携で、マネジメント層として意識しておきたいこと、やるべきことはありますか?

茂野
まず、「インサイドセールスは、高度なコミュニケーションが求められる部署」という前提を握っておくことです。また、耳が痛いような情報が飛び交うということも念頭に入れる必要があります。言い換えれば、ミーティングではいかに組織の改善ポイントを炙り出せるかが重要であるということを念頭に置く必要があります。

その上で大切なのはコミュニケーションを取り続けることです。
コミュニケーションが円滑でない組織では、意見齟齬が生じた際に、両者のコミュニケーションが断絶してしまいます。お互いの愚痴を言い合うだけで生産性のあるやり取りが生まれない状態は望ましくありません。

改善ポイントを他部署間で指摘し合うような、”健全な、良い意味での対立構造”は作るべきだと思います。お互いに気兼ねなく、フィードバックし合える環境を作れるかが大事であると考えています。

また、お互いが合意した同じレポートダッシュボードを見ることもコミュニケーションを継続していくうえで必要です。数字は、収集方法によって見え方が変わるため、自分の部署では達成したけど、相手の部署では達成していないということが容易に起きます。認識の違いを避けるためにも同じレポートダッシュボードをみて、同じ感覚を醸成していくことが大切です。

各部門のKPIを共有し、合意形成しよう

――チームや部署ごとの部分最適ではなく、会社として全体最適を目指すためはどうしたらいいでしょうか?

茂野
様々な部門に情報や追うべきKPIを共有して、その合意を得ることです。

マーケティングはリードをとる、インサイドセールスは商談をつくる、フィールドセールスは成約する、カスタマーサクセスは継続していただく等々、各部門ごとに役割は異なります。各部門の細かい数字(KPI)は常に柔軟に変えていくべきですし、それぞれのKPIを部門間で共有して、各部門が追うべきKPIを合意する必要があります。

例えば、インサイドセールスとフィールドセールスの重要指標として、「次の3ヶ月は商談機会を最大化する。商談機会のうち実際に有効化した商談率(有効商談化率)はモニタリングするものの最重要KPIではない。」といったことをインサイドセールスとフィールドセールス間で合意するべきなのです。

その合意がないと、インサイドセールスとしては「たくさん商談機会を創出しました」となっても、フィールドセールスからすると「有効商談化率低いけどなぜ?」となってしまいます。その隔たりを無くすためにも、何故そのKPIを設定するのか理由まで含めて合意しておくべきです。

――そうした全体最適や合意を取るために取り組んでいることはありますか?

茂野
やはり、信頼関係を構築し、コミュニケーションを活発に取ることだと思います。
「コミュニケーションの深さ」=「ミーティング中に、どれだけ多くの改善ポイントを炙り出せるか」、だと思います。

次回予告

さて、お話はまだまだ続きますが、第6回はここまでとさせて頂きます。
次回は「インサイドセールス導入時にやってはいけないこと、やるべきこと」について公開予定ですのでお楽しみに!

【過去記事】
第1回インタビュー記事「インサイドセールスが企業の成長に欠かせない理由とは?」
第2回インタビュー記事「ビズリーチがインサイドセールスに注力する理由」
第3回インタビュー記事「インサイドセールスチームの組織や採用」
第4回インタビュー記事「人材育成・モチベーション管理・定量目標」
第5回インタビュー記事「業務を円滑にするために工夫しているポイント」


株式会社ビズリーチについて

「インターネットの力で、世の中の選択肢と可能性を広げていく」をミッションとし、2009年4月より、人材領域を中心としたインターネットサービスを運営するHRテック・ベンチャー。東京本社のほか、大阪、名古屋、福岡、シンガポールに拠点を持ち、従業員数は1,238名(2018年6月現在)。即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」や、挑戦する20代の転職サイト「キャリトレ」、AI技術を活用した戦略人事クラウド「HRMOS(ハーモス)」、求人検索エンジン「スタンバイ」、事業承継M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」などを展開。
参照URL:https://www.bizreach.co.jp/