営業力を劇的に上げる視野・視座・視点の持ち方
前回、営業の本質について考察した上で、営業力を高めるには①聴く力(Input力)、②伝える力(Output力)を磨けば良いことをお伝えしました。
相手の課題・ニーズを把握するための“聴く力(Input力)”と、それを踏まえたうえで相手に解決策を理解していただくための“伝える力(Output力)”を高める方法とは?
その秘訣は、正しい視野・視座・視点をもって商談の事前準備段階から情報を整理していくことにあります。
聴く力と伝える力の高め方
聴く力と伝える力を高める方法は複数ありますが、そのなかでも重要なポイントの一つに正しい視野・視座・視点を保つことがあります。
視野・視座・視点、少しわかりにくい言葉かもしれませんが、本コラムにおいては以下の通り定義づけています。
- 視野:
→視野が広い、狭いと表現されるように、物事を俯瞰する範囲を示します。物事を正しく把握するためには、全体像を理解するために、広い視野を持つことが重要です。
- 視座:物事を視る姿勢や立場を意味します。
→同じ物事でも人や立場によって見方は異なるため、例えば、顧客と接する際においても、顧客を一括りにするのではなく、それぞれの相手の立場から物事を考えることが重要です。
- 視点:着目しているポイント、ピントを合わせている点を意味します。
→三角コーンのような円錐を横から見ると三角に、真上から見ると丸に見えるように、物事はどこに着目するかによって意味合いが異なる場合があります。チームや顧客との話が噛み合わない場合は、それぞれが着目しているポイントが異なる可能性があるため、もう一度広い視野、正しい視座にたって考えられているかを確認する必要があります。
少し概念的な話ばかりになってしまいましたので、より具体例を交えてご説明差し上げます。
具体例
【前提】
それでは、以下の商材、想定顧客をベースに、どのように事前準備を行い、商談に臨むべきか、ケーススタディを行ってまいります。
商材:
「電話営業におけるトーク内容を分析・採点する」AI搭載型クラウドIP電話。
営業トークにおける話速、会話の被せ率、Talk:Listen比率等を分析・採点することで営業担当者が自らのトーク内容を振り返り、自己改善していくことでアポ獲得率・成約率向上を図るサービス
想定顧客:
社歴5年、従業員数100名程度の人材紹介会社。中小企業向けのエンジニア紹介サービスに強みを有する。今回の商談相手は営業部の部長と仮定。
【事前準備段階1】
まずは商談の相手方を理解し、訴求すべき課題を確認すべく、基本情報を収集営業段階における仮説構築を行っていきます。この段階において適切な仮説構築を行うことが、聴く力、伝える力を高めるための大きなカギとなるため適切な視野・視座から情報収集・仮説検証を行っていきます。
視野の持ち方 – 人材紹介業界の特徴およびその中での想定顧客の立ち位置:
広い視野に立つ、つまり業界全体を俯瞰し、顧客企業の立ち位置を理解していきます。基本情報を収集していった結果、前述の通り想定顧客は「人材紹介会社」、「中小企業向け」、「従業員数100名、」「社歴5年」という情報を得ています。
業界別特徴の把握:
一般的に、人材派遣業界は営業が担当する顧客(=転職等を希望する社会人および紹介先の企業数)数が多く、1日当たりの商談数を極力多く設けるために、電話による商談を多く設ける傾向があります。
業界内での立ち位置の把握:
上記に加えて、今回の想定顧客は中小企業を主要顧客とすることから、更に顧客数が多く電話で商談を行うニーズが強くなります。
その他参考情報:
業歴5年と比較的新しい会社である為、先進的なインサイドセールス(内勤営業:詳しくはコチラ)を組織化している可能性が高い。
視座の持ち方 – 営業部長の視座に立った場合:
想定課題意識① – 商談化率、成約率の向上:
仮に先進的なインサイドセールスチームを抱えている場合には、商談化率、成約率等が日々管理されており、これらの指標を改善するために創意工夫を図っている場合があります。
想定課題意識② – 管理工数の削減:
前述の人材紹介業界における特性と主要顧客(中小企業)を考慮すると、1日当たりの商談数が非常に多く、営業パイプラインの管理工数が膨大になることが予想され、このような管理工数の削減に大きな課題意識を持っていることが予想されます。
想定課題意識③ – 教育工数の削減:
人材紹介会社における平均的な営業人員比率はおおよそ30%程度と言われており、おおよそ30人程度の部下を抱えていることが予想されます。比較的転職が多い人材紹介業界に位置し、業歴5年であることを踏まえると、積極的な採用を行っていることが予想され、部下の教育工数に相応の課題を抱えていることが予想されます。
想定課題意識④: – 電話料金等の費用削減
管理職の方々は部の損益状況にも責任を有しているため、日々の電話料金を含む通信費削減にも関心を示す可能性があります。
【商談段階】
広い視野・顧客の視座から仮説を構築することが出来れば、営業段階における対応はかなりシンプルなものとなります。
事前準備段階において準備した、優先度順に相手方の抱えている可能性の高い課題に関する質問を投げかけていくことで、相手が課題の有無を回答してくれる可能性が増し、結果的に
「聴く力」が大きく改善されたと感じることが出来るでしょう。
顧客の課題が正確に認識出来れば、あとは取り扱う商材がどのように相手の課題を解決するかを伝えるだけですので、結果的に
「伝える力」も改善することなります。
更に、相手の立場や業界の特徴を踏まえた相槌をうつことも、顧客が自分の視点に立って解決策を考えてくれていると感じ、よりオープンに課題をお伝えしてもらえる傾向もあるため、おすすめです。
尚、今回は想定商談相手が営業部長であったため、想定される課題を①⇒④の順番にリストアップしましたが、仮に総務部長である場合には、売上向上に対する責任を負っていない一方で、固定費削減に対して課題意識を有している可能性が高いことから、④の費用削減をより重要視している場合がありますので、商談中に着眼すべき視点が異なることにご留意ください。
まとめ
このように、
視座・視野・視点を正しくもつことで、聴く力と伝える力が大きく改善できる可能性がありますので、是非皆さんも試してみて下さい。
そこで次回は、「どの様に質問したら良いのか?どうしたらこちらが聞きたいことを聞けるのか?」についてお伝えいたします。