シンフォニーマーケティング株式会社 庭山氏独占インタビューVol.1

みなさん、こんにちは。

今週から隔週で全2回にわたり、シンフォニーマーケティング株式会社 代表取締役 庭山氏のインタビューをお届けします。


シンフォニーマーケティング株式会社
代表取締役
庭山 一郎氏
1990年9月シンフォニーマーケティング設立
データベースマーケティングのコンサルティング、インターネット事業など数多くのマーケティングプロジェクトを手がける。1997年よりBtoBにフォーカスした日本初のマーケティングアウトソーシング事業を開始。製造業、IT、建設業、サービス業、流通業など各産業の大手企業を中心に国内・海外向けのマーケティングサービスを提供している。海外のマーケティングオートメーションベンダーやBtoBマーケティングエージェンシーとの交流も深く、長年にわたって世界最先端のマーケティングを日本に紹介している。

インターネット黎明期からBtoBマーケティングを専門にされている庭山さんは「現在の日本におけるBtoBマーケティングの状況」をどのように感じていますか?

(ツールや手法で言うと、CRM/SFA・メールマーケティング・MA・ABM・インサイドセールスと日々進化しているように思います)

まず、率直に申し上げると日本のBtoBマーケティングは米国と比較すると15年遅れています。そして残念ながら、その差は広がっていると感じています。差が広がっている理由は、決して日本がサボっているという訳ではありません。
米国のBtoBマーケターは非常に厳しい環境で戦っている為、進化のスピードが速いです。5〜6年前でしたら、米国から10年遅れていると話していましたが、米国は加速し続けているのでその差は更に開いて今は15年遅れています。それが、私が感じている日本のBtoBマーケティングの現状です。

―今後、日本のマーケティングが米国に追いつく為にはどうしたら良いでしょうか?
ユーザーサイドの経営層が本気でマーケティングに取り組む姿勢が何より重要です。現場のマーケティング担当がいくら頑張ったところで限界があるので、企業の経営層への啓蒙活動が最も大切だと感じています。

―庭山さんは経営層の方とお話をする機会も多いかと思いますが、その際どのようなお話をされるのですか?
まずは日本のマーケティングは米国から遅れているという事実を率直にお伝えします。そして、その方の同業にあたる米国企業は「どのような取組みしており、どれくらい遅れているのか」具体例を交えてなるべくストレートにお伝えするようにしています。
日本の場合、「マーケティングは必要」という総論に対しての反対は当然ながら無いです。しかし、各論に落としていくと「まぁ、そうは言ってもすぐには難しいですね」という経営層が非常に多いです。「人材もいない、組織も無い、自分もマーケティングのことをよくわらないし」という方が非常に多いです。総論賛成、各論反対という方が多く、正面切って「マーケティング部門は、うちの会社には不要」という経営層はさすがにいなくなりましたね。ただし、各論になると中々動かないというのが現状だと思います。

―今後、日本のBtoBマーケティングはどのようなことをすべきでしょうか?
米国と比較して15年遅れているということは、少なくとも追いつくまでは米国という見本があるので全く同じ手法をするかどうかは別として、真似をしながら進められるということです。
まずはしっかりとデマンドセンター※という組織を構築し、データを渡す先として良質なインサイドセールスチームを構築するというのが基本的な流れだと思います。
また、日本の多くの企業はチャネル(販売代理店)を使ってセールスをしているので、マーケティング部門が創出した有望見込み客リスト(MQL)を営業や販売代理店に配分する役割を担うポジションであるADR(Account Development Representative)を設置する、販売パートナーやその営業チームとのコミュニケーションを管理して自社の製品の販売促進するためのPRM(Partner Relationship Management)なども重要になります。

―米国のマーケターは会社に対するロイヤリティは低い?
米国の場合、優秀なマーケターほど、良いオファーがあれば明日にでも転職を考えるという方も多いです。その為に、自らのスキルに投資をする・情報収集をする・ネットワークを構築するなどの努力は惜しみません。所謂、プロフェッショナルなのです。米国のマーケターはほぼスペシャリストであり、ジェネラリストが多い日本との大きな違いです。世界で通用するマーケターになるためには、やはりスペシャリストとしての知識と経験が必要であると断言できます。
マーケティングの世界はそんなに甘い世界ではないのです。

日本におけるBtoBマーケティングの課題はどのようなことだと思いますか?

先程、日本のBtoBマーケティングは米国と比較して15年遅れているとお伝えしましたが、
マーケティングツールに関してのタイムラグはほぼ無くなりました。強いて言うならBIに関して、まだ尖ったツールが日本に進出していないのとBIの先にあるプレディクティブアナリティクス(Predictive Analytics)というのもまだ広まっていないです。後者に関してはまだ日本で市場が小さいということもありますが、それ以外はリアルタイムで入手できるようになりましたのでツールのタイムラグは解消された言っても過言ではないでしょう。マーケティングエージェンシー(marketing agency)に関しては、米国ほど数は無いのでユーザーからすると選択肢は少ないかもしれません。

では、何が遅れているのかと言いますと、企業内にいるマーケティング担当者のスキルが15年遅れているのです。誤解して欲しくないのは、日本のマーケターがサボっている訳ではありません。BtoBマーケティングに関しては、学ぶ環境がないことが原因なのです。

米国のマーケターを例に挙げると、まずは大学でマーケティングを学び、社会人でマーケティング部門に配属され、そこで何年か実務経験を積んでから大学院に戻り、その後再度企業に戻るというキャリアモデルが多いのです。
つまり、マーケティングのプロフェッショナルなのです。このように米国企業のマーケティング部門の人材層は厚く、学ぶ環境も多いためマーケターが持つナレッジや経験は豊富であり、これらの点から日本と米国では差があり過ぎると感じているのです。

―それは日本と米国のマーケターの待遇の差によるものも大きいのでは?
勿論それはあります。米国のマーケターが何故そこまで自分自身に投資をするのかと言うと、米国のマーケティング部門は花形であり、マーケターの給料も高くエリートと呼ばれる人が多いからです。米国でこのような事を言った方がいます。「売れるセールスはセールスマネージャーになる。優秀なマーケターはCEOになる」。それぐらいマーケターは自身の仕事にプライドを持っているということです。経営戦略とマーケティング戦略は表裏一体なので、マーケティング戦略を策定できない方がCEOになるのはあり得ないという考え方が米国では普通です。プロフェッショナルマーケターが全員CEOになるということではありませんが、そうした背景があるということだと思います。

また、日本と比較しても米国企業マネジメント層のMBA取得率は非常に高いです。MBA取得には、マーケティング、ファイナンス、HRなどの知識も必要です。
プロフェッショナルの経営者というのは、マーケティングやHRだけでなく、生産や物流などのプロフェッショナルと専門用語で話ができ、レポートが読め、指示ができるというスキルが必要です。
しかし日本企業の場合、営業・技術に秀でた経営者が多く、マーケティングマネージャーが提出するレポート、例えばデマンドウォーターフォール(Demand Waterfall)を理解している方が何人いるでしょうか。厳しい言葉ですが、今の日本と米国のマーケターに格差があるのはそうした背景も影響していると思います。

マーケティング体制を整備するとどのような変化が起きるのでしょうか?

単刀直入に申し上げますと、営業の訪問スケジュールが良質な案件だけで埋まります。つまり、営業が自ら新規案件を探すという作業から解放されるということです。営業のリソースをキーパーソンとの商談に集中させることができるので、生産性が飛躍的に向上します。
我々はむやみやたらにアポを取得するということはしません。営業の稼働から逆算してアポを取得しますし、アポから逆算してコール数も決めます。全て逆引きで計算した上で、リードジェネレーションから数字の整合性を取っていくので、プロセスが全て数値化・可視化され、健全な組織運営が可能になります。
また、プロセスが数値化されているので、目標との乖離が起きた場合でも迅速かつ容易にリカバリー出来ます。マーケティングによって質の良いアポイントが増えて、商談に集中できる環境が整えば、営業の生産性が向上し必然的に売上も上がります。

―ゼロからマーケティング組織を起ち上げる場合、目に見える成果が出るまでにどれくらいの期間を見込めば良いでしょうか?
1年もあれば目に見える成果を出せるようになると思います。因みに、弊社のお客様はBtoBでも製造業が多いので、商談を作成してから受注までのリードタイムが長く、3年程度かかるものもあります。例えば、自動車関係の部品を製造しているお客様ですと、良い評価を受けた製品でもそれが正式採用されるのは次のマイナーチェンジというタイミングだったりしますので、受注は5年後ということもあります。
現在は、1年後に目に見える成果を出してくださいというお客様は減り、より短期化での具体的な成果を求められることが多くなりました。当社としてサポートできるかは、お客様の状態を確認させていただいてからとしています。
例えば社内にリードデータがない場合は集めるところから始めなければなりません。有効な展示会が半年後に予定されている場合、その時点で半年以内に成果を出すことが難しいという判断になります。リードジェネレーションの方法は様々ありますが、日本の場合はリードデータを統合管理してみると、社内に保管されていた名刺情報と展示会で獲得した名刺情報で全体の約8割を占めることも多いのです。SNSやSEOでは、名刺情報と同等の氏名・部署名・役職・連絡先を獲得できる状態にするにはまだまだハードルが高いです。結局のところ、展示会が最もターゲット層の名刺獲得に繋がる可能性が高いのです。

このような場合には、目に見える成果を出す為の期間についてお客様としっかりと認識合わせをさせていただきますが1年あれば手応えを感じていただいていると思います。

第2回に続く