成約率を上げるSPIN話法の活用術と、他話法の基本をおさらい(BANT/SNAP/MEDDIC)

株式会社アタックス・セールス・アソシエイツの「日本の営業実態調査2019」によると、約85%の営業マンが自身の営業活動に不安を感じています。顧客に適切な提案ができているか否か自信が持てないと悩んでいるようです。その解決策として、顧客のニーズや課題を引き出す「SPIN話法」が注目を集めています。本記事では、「SPIN話法」の基本と活用術を紹介します。 

SPIN話法とは?

 SPIN話法とは、顧客の潜在ニーズを引き出す営業技法です。営業の世界ではよく「セールスマンは“トーク力”よりも“ヒアリング力”が大事」という言葉を聞きます。具体的には、「Situation(状況質問)」「Problem(問題質問)」「Implication(示唆質問)」「Need payoff(解決質問)」の4つの質問を顧客に投げかけて、顧客自身が抱く潜在ニーズに気付いてもらい、商談をスムーズに進めます。

 SPIN話法は、ニール・ラッカムが自身の著書「SPIN selling(1988年)」で提唱したフレームワークであり、30年以上の月日が経過した現在も広く使われています。

(参考:Keywordmap「SPIN営業とは?潜在ニーズに迫る4つのステップを事例と共に紹介」)

SPIN話法の実際の流れについて

ここからは、 SPIN話法の実際の流れについて、事例を踏まえながらご説明します。 SPIN話法は「Situation(状況質問)」「Problem(問題質問)」「Implication(示唆質問)」「Need payoff(解決質問)」の順番に行っていきます。

(1)Situtation(状況質問)

まずは、顧客の立場や現状を理解しましょう。立場や現状を理解することで信頼関係が生まれます。顧客の業務状況や遂行方法について質問します。以下は質問例です。

・XXXを担当されているとのことですが、具体的にはどのような業務を行っていますか?

・XXXの業務はどのようになっていますか?

・それぞれの業務は、どれぐらい時間がかかっていますか?

・XXXの責任者は誰ですか?

(2)Problem(問題質問)

状況質問の回答を踏まえたうえで、問題点の仮説を立てて質問を行います。特定の業務に必要以上のリソースを割いていないか等を質問して、顧客の潜在ニーズを引き出しましょう。以下は質問例です。

  ・そうなると、忙しすぎて新しい施策を実行することができないのではないでしょうか?   

  ・現在使用しているツールに満足していますか?

(3)Implication(示唆質問)

示唆質問とは、問題が解決しないことによって起こりうる事態に対して、解決策を打たなければいけないと感じてもらうことが目的です。トップの営業マンは、通常の営業マンと比べて4倍ほどの示唆質問を投げていたことが SPIN話法の研究によって判明しました。そのため、示唆質問を通して、顧客に課題解決の必要性を感じてもらえるかが営業活動そのものが成功するか否かの大きな分岐点となることでしょう。以下は質問例です。

 ・広告のクリエイティブやターゲットの見直しを頻繁にできれば、もっと成果が上げられそうですよね?

 ・もしかしたら、顧客になりうる人に必要な情報を届けられていないかもしれないですね?

(4)Need-payoff(解決質問)

最後に、顧客が抱えている課題が解決できたらどうなるかについてイメージしてもらうための質問を投げかけます。また、実際に課題を解決する方策として、自社の製品が有効であることを感じてもらうことを忘れないようにしましょう。以下は質問例です。

・今まで行っている業務にかかっている時間を減らせるならば、

 より成果を出すことができるかもしれませんね。実は、それを実現できるのが弊社のXXXです。  

(参考:Keywordmap「SPIN営業とは?潜在ニーズに迫る4つのステップを事例と共に紹介」)

(参考:Sales Odyssey「How to use the SPIN Selling method to close more Deals」)

SPIN話法を活用する上でのポイント

国内は新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で対面営業の機会が減り、リモート営業を実施する企業が増えてきています。リモート営業では対面営業よりもヒアリング力が重視されるため、「 SPIN話法」はより注目されてきています。

先進国の米国では、新型コロナウイルスの影響を受ける前からインサイドセールスを中心にリモート営業化がなされてきました。特に SPIN話法とデジタルを組み合わせて活用されています。

デジタルツールで事前調査

 SPIN話法は、顧客の潜在ニーズを引き出すための技法です。しかし、デジタル情報社会となりヒアリングをしなくても、デジタルツールを使用してニーズを事前調査することができるようになりました。そのため、商談前に企業研究や競合他社の研究を行うことで、相手が何に興味・関心があるかニーズを把握でき、商談をより優位に進めていくことができます。

ソーシャルセリングの実施

米国では、FacebookやTwitter、Linkedlnなどを活用したソーシャルセリングが実施されています。BtoBビジネスは人と人のつながりが基本であるため、SNSを活用してコミュニケーションが図られています。

米国では、ソーシャルセリングを実施している企業の約5割が新規顧客の獲得に成功していると言われています。従来は、大手企業がソーシャルメディアを使用していましたが、中小企業でも使用する動きが出てきています。ソーシャルセリングでも、 SPIN話法を生かすことができ、新規顧客の獲得に繋げることができるのです。

CRMシステムを導入する

営業活動は属人化しやすいと言われていますが、企業の売上をアップさせるためには、顧客管理の一元化が必要です。顧客情報を一元管理することで、営業担当者の対応漏れや引継ぎ時の労力を大きく削減できます。

部署間の情報共有が簡単になり、担当者不在のトラブルにも対応可能です。その結果、顧客満足度の向上もできます。そのため、 SPIN話法で得た顧客の潜在ニーズもCRMシステムで管理することが大切です。

(参考:Sales Odyssey「How to use the SPIN Selling method to close more Deals」)

(参考:smallbizgenius「23 Social Selling Statistics You Need to Know in 2020」)

 SPIN話法と合わせて覚えたいセールス術

米国ではインサイドセールス部隊を持つ企業が多く、セールストレーニングが積極的に実施されています。営業に関するフレームワークもさまざまなものが登場しているため、 SPIN話法と合わせて活用しましょう。ここでは、Salesforce社が紹介する4つのセールス術について紹介します。

BANT

法人営業の成約率を上げたり、営業先の優先順位を決めたりするテクニックとして活用されるのが「BANT」です。Budget(予算)・Authority(決裁権)・Need(必要性)・TimeFrame(導入時期)の頭文字を取ったものです。営業戦略を立案したり、営業の優先順位を付けたりするときに役立ちます。

Budget(予算) 予算を確保しているか?
Authority(決裁権) 誰が決定権・決裁権を持っているか?
Need(必要性) 企業の要望と提案が合致しているか?
TimeFrame(導入時期) 商品購入時期が具体的に決まっているか?

(参考:Keywordmap「【事例あり】BANTとは?~営業の効率や成果が上がるヒアリングテクニック~」)

NEAT Selling ™

NEATSelling™は、ハリスコンサルティンググループのセールストレーニングの指針です。NEAT Selling ™は、顧客の潜在ニーズを掘り出すセールス手法で、共感力を高めて信頼関係を築く際に役立ちます。多忙な顧客の気持ちに寄り添い、信頼を勝ち取る方法です。

Need(必要性) 企業の要望と提案が合致しているか?
Economic Impact(経済的影響) 必要な製品を導入することで、どのような経済的効果が得られるか?
Access To Authority(権限へのアクセス) 決裁権は誰にあるか?組織図は?
Timeline(行動計画) いつ契約するのか?製品導入後の運用開始日はいつか?

(参考:Lucidchart「All about the N.E.A.T. Selling™ methodology」)

(参考:https://theharrisconsultinggroup.com/neat-selling/)

SNAP

デジタルシフトの時代で、顧客はより多くの情報から適切な情報を選ばなければいけなくなりました。情報の取捨選択は顧客にとって、大きな負担となっています。そのため、適切な情報を簡単に分かりやすく伝えたり、顧客が実現したいことをヒアリングして、信頼を得る手法が「SNAP」です。

Simple(簡潔) 顧客が必要としている情報とは?簡潔に情報を伝えるにはどうするべきか?
Invaluable(価値) 顧客が必要としている専門家とは、どのような人か?
Align(目標や信念) 顧客が達成したいビジネス目標とは?
Priority(優先順位) 顧客の中でのビジネス優先順位とは?

(参考Salesmate「Using SNAP Selling for Winning More Deals Successfully」)

MEDDIC

行動の転換が必要となる製品を扱う場合や、平均単価が高い製品の法人営業の成約率を上げるテクニックとして活用されるのが「MEDDIC」です。購買プロセスがどのように進むか、どのような理由で購買に至るか、決裁権は誰かなど正確なパイプラインを維持する上で重要な手法です。

Metrics(測定指標) 決裁者が望む定量的効果は得られるか?
Economic Buyer(決裁権限者) 決裁者は何を望んでいるか?
Decision Criteria(意思決定基準) 製品の選定基準はなにか?自社に優位な選定基準か?
Decision Process(意思決定プロセス) 発注までの承認プロセスは?
Identify Pain(課題) 決裁者が抱えている課題は?
Champion(擁護者) 自社の製品の推進者を決めているか?

(参考:HubSpot「営業見極めを正しく行うには|MEDDIC、BANTの活用」)

(参考:Salesforce「A Brief Summary OF 5 Different Sakes Methods」)

まとめ

今回は、顧客の潜在ニーズを引き出すヒアリング力を支える SPIN話法を紹介しました。 SPIN話法とは、顧客を理解するための「聞く力」を強化するためのフレームワークです。「Situation」「Problem」「Implication」「Need payoff」の4つの質問をすることで、顧客自身に潜在ニーズに気付いてもらい、商談をスムーズに進める効果が得られます。

30年以上前の営業手法ですが、ソーシャルセリングでも活用できます。新型コロナウイルスの影響で対面営業の機会が減少する中で、リモート営業の成約率を上げる営業手法としても再注目されています。その他、BANT、NEAT Selling ™、SNAP、MEDDICなどの営業スキームも注目されてきており、本記事を参考にして実践してみてください。


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・おまけ
また、営業力を強化する方法、インサイドセールスの導入及び効果的な運用については、E-Bookに記載しましたので、ダウンロードしてお役立てください。