不動産業界がDXに取り組む理由と、必要なDX施策とは?

(はじめに)

新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を大きく受けたのが不動産業界です。クラスココンサルファームが2020年6月に実施した調査によると、約8割の不動産会社が前年比で成約件数が下がったと回答しています。緊急事態宣言の影響で集客が減少した事などによるものです。

不動産業界全体が不況に見舞われる中で、このような環境下でも、AI・RPAなどを活用した先進的システムを導入して、DX化した不動産会社は業績を伸ばしています。

本記事では、不動産業界のDX化について解説します。

(参考:BUILT「新型コロナの不動産業界への影響を調査、81%が集客減」)

(参考:ダイヤモンド・オンライン「オープンハウスが会社も土地も爆買いか、コロナでも過去最高益更新へ怪気炎」)

 不動産業界で導入が進む「DX化」とは

経済産業省が2018年9月に発表した「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」では、DX化がなされなければ、2025年以降に年間で最大12兆円の経済損失が生じる可能性もあり、生き残るためには、DX化は不可欠と指摘されてます。

さらに、コロナ禍で対面接客が懸念されるなど、ビジネスモデルが変化する中でデジタルを活用した「生産性」「効率性」「価値提供」が見直され始めており、企業はDX化を避けられない状況になってきました。

(参考:経済産業省「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開」)

DX化は急務!不動産業界が受けている3つの影響

不動産会社はDX化をしなければいけないのでしょうか?まずは、DX化が推奨される不動産業界が抱える課題について解説します。

その1:新型コロナウイルスによる影響

(出典元:BUILT「新型コロナの不動産業界への影響を調査、81%が集客減」)

ラスココンサルファームが実施した前掲調査によると、81%の不動産会社が集客減したと回答しています。

国土交通省は、2020年3月31日には不動産業界に対して、賃料の支払いが困難なテナントについては柔軟な措置を検討して欲しいとの要請がありました。

また、コロナ禍で企業のオフィス解約・縮小移転が増えてきているとも言われています。 新型コロナウイルスの流行が続くほど、不動産業界は難しい対応に迫られることが分かります。

(参考:BUILT「新型コロナの不動産業界への影響を調査、81%が集客減」)

(参考:国土交通省「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、飲食店等のテナントの賃料の支払いについて柔軟な措置の実施を検討するよう要請しました」)

(参考:NHK「テレワーク導入で都心部のオフィス賃貸解約や面積縮小」)

その2:物件の過剰供給による影響

(出典元:リフォーム産業新聞「総務省発表、「平成30年住宅・土地統計調査」空き家数は?」)

総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査(速報値)」によると、全国の住宅総数は6,242万戸、空き家数は846万戸で、空き家率は約13.6%となり、前年比増加しています。物件の過剰供給がさらに進んでいる状況です。

そのため、物件の過剰供給および少子高齢化に伴う需要減について不動産会社は見込んでおかなければいけません。このような影響を受けることを見込んで、業務効率化を図り、少数精鋭で運営することが不動産会社には求められていきます。

 その3:少子高齢化社会による影響

(出典元:厚生労働省:合計特殊出生率の年次推移)

2019年の人口動態調査によれば、年間出生数は86.4万人。過去最低の91.8万人を記録した2018年から約6%も減少しました。さらに、死亡数から出生数を引いた人口自然減は51万5864人で、初めて50万人を超え、人口減少や少子高齢化が一層進行しています。

少子高齢化によって、住宅需要は確実に弱まってきているので、不動産業界は少子高齢化による市場縮小を見越した事業展開を考えなければなりません。

(参考:厚生労働省「人口動態調査」)

不動産業界のDX化の方法

新型コロナウイルスの影響で、内見や来店を敬遠する顧客が増加したため、非対面での接客を進めることが重要です。ここでは、実際に、どのようにDX化を取り組めば良いかについて解説します。

不動産業界のDXの取り組み方

一般社団法人不動産テック協会の「DX意識調査アンケート」によれば、新型コロナウィルスの影響で全体の約60%が「ウェブ会議室システム」「チャットツール」「勤怠システム」など社内向けツールを導入することでDXに取り組んでいるようです。

しかし、その一方で、社外向けツールである「電子申込」「電子契約」「オンライン内見・VR内見」などを検討および導入をしている企業は1割程度にしか過ぎません。

Digital Worlstyle Collegeを運営する日本デジタルトランスフォーメーション推進協会が推奨している不動産会社のDXの取り組み方は以下の通りです。

  ビフォーDX アフターDX
追客 メールや電話で追客 チャットで自動追客
店舗 対面接客 ビデオ通話で非対面接客
物件案内 直接案内による内見 遠隔でオンライン、VR内見
物件確認 電話で物件確認 リアルタイムデータベース
内覧予約 FAXで内見予約 ウェブで内見予約
申込 申込書を作成 電子申込、電子契約
重要事項説明 対面による説明 IT重説
物件情報更新 エクセルで物件情報を更新 アプリで物件情報を更新
物件管理 管理台帳でレポート アプリで自動レポート

イタンジ株式会社が2020年2月に実施した調査では、非対面で完結する賃貸サービスを利用したいと回答した人が全体の70%超となりました。このように内見や来店を敬遠する顧客が増加している中で、社外向けツールの導入は今後必要になるでしょう。

(参考:イタンジ「スマートフォンで完結する賃貸サービス」「部屋探し体験における不満」等の調査)

(参考:一般社団法人不動産テック協会「不動産業界向けDX意識調査アンケート」)

 まとめ

今回は、不動産業界で取り組み始められているDX化について解説しました。新型コロナウイルスの影響でDX化に注目が集まりましたが、不動産業界は新たな局面を迎えます。

 

・新型コロナによる影響

・少子高齢化社会による影響

・物件の過剰供給による影響

 

上記の影響を受けてビジネスモデルが変化するため「生産性」「効率性」「価値提供」の見直しが重要です。ぜひ、本記事を参考にしていただき、DX化を進めてみてください。